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On the Production
by 井口健二
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■人間失格、白鳥の湖/チェネレントラ、50歳の恋愛白書、監獄島
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※
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『人間失格』
1948年に発表された太宰治の代表作を、太宰の生誕100周年
に当たる2009年に角川映画が満を持して映画化した作品。
貴族院議員でもある津軽の資産家の父の許に美貌を持ってい
生れた主人公が、やがて没落し、自らを見失って行く姿を描
いた原作に関しては、僕は破滅文学と心得ていたが、今回は
現代にも通ずる青春文学として紹介されていた。
確かに、美貌を持って生れた若者が幾人もの女性に慕われて
女性遍歴を繰り広げ、それと共に主人公が没落して行くとい
う展開は、青春文学の類型の一つのようではあるし、実際に
原作本は、漱石の『こころ』と並んで文庫本の売り上げトッ
プを競っているそうだ。
しかも今回の映画化では、原作が太宰の自伝的な側面を持つ
という説に基づき、主人公が通うバーを文壇バーという設定
にして、太宰が実際に交流した中原中也なども登場させ、特
に中原は主人公にも影響を与える重要な人物として描かれて
いるものだ。
という、一見、受け狙いの感じもする構成の作品だが、その
物語は心中などの重いテーマを描き続け、さらに後半では、
麻薬中毒など正に破滅的な主人公の姿を描き出す。その印象
はかなり強烈だった。
主演は、ジャニーズ所属の生田斗真。共演は、堀木役に『ブ
ラインドネス』などの伊勢谷友介、ヒラメ役に石橋蓮司、ま
た中原中也役にはジャニーズ系V6の森田剛が扮している。
そして本作では、主人公の女性遍歴の相手として、寺島しの
ぶ、小池栄子、石原さとみ、坂井真紀、室井滋、大楠道代、
三田佳子が登場。華やかさというより、かなり癖のある感じ
の女優陣が、アイドル系の主人公を盛立てている。
なお、同じ原作からは日テレ系の深夜枠『青い文学』シリー
ズでアニメ化された作品も、追加映像及び再編集されて劇場
公開される。こちらには中原中也は出てこないが、主人公の
感じる「おばけ」が映像として登場するアニメーションらし
い作品になっていた。
ただしこのアニメ版では、麻薬に係わる後半の部分が削除さ
れているのは、テレビ放送を考慮したのかな。それぞれいろ
いろな仕掛けはあるが、この両方を観れば、原作の全貌がそ
れなりに掴めてくる感じはしたものだ。
『白鳥の湖』“Swan Lake”
『チェネレントラ』“La Cenerentola”
前回紹介の『アイーダ』に続いてオペラなどの舞台を撮影し
たHD映像の試写が行われた。
因に今回は“World Classics@Cinema”と称して、今年上演
の新作だけでなく、2003年から昨年までのアーカイブの作品
も含め8作品が上映されるもの。その内から試写では、バレ
ーとオペラの2作品を観せて貰った。
バレーの『白鳥の湖』は2006年にロシアで撮影されたものと
のことで、製作はBBCだったと思うが、舞台面だけでなく
別撮りで舞台上にカメラが上がって撮影されたシーンも挿入
されていた。
僕は、このようなクラシックバレーをちゃんと観るのも初め
てだったが、作品の内容はまあ知られたもので、特に黒鳥の
踊りの有名なターンは迫力も満点で堪能できた。ただし、バ
レーというのは本当に踊りだけで物語が進むもので、予備知
識がないと理解が難しいことは認識できた。
もう1本は『アイーダ』と同じくヴェルディ作曲のオペラ。
『チェネレントラ』とは、イタリア語での「シンデレラ」の
ことのようで、不幸な境遇の娘が最後は王子様に認められる
という大筋は童話と同じものだ。
しかし魔女の登場はなく、代りに王子の教師でもある哲学者
が娘を誘導して王子に目逢わせる展開となっている。魔法の
出てこない「シンデレラ」なんてどんなものかとも思ってみ
たが、案外スマートな物語になっていた。
それにしても、ヴェルディのオペラは常にこうなのか、複数
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11月29日(日)
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