ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■ブラック会社…限界、谷中暮色、海角七号、スペル、バカは2回海を渡る、きみがぼくを見つけた日、倫敦から来た男、戦慄迷宮(追記)+他
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『ブラック会社に務めているんだが、もう俺は限界かもしれ
ない』
黒井勇人原作のブログ小説の映画化。高校中退で引き籠もり
だった男性が母親の死を切っ掛けにネット生活で得たプログ
ラマの資格(国家試験だそうだ)を手に中小のIT会社に勤
めるが…
舞台挨拶付きの試写会を観に行ったが、会場で配られたブラ
ック会社の査定表を何気なくチェックしていたら、以前に務
めていた職場が、厳しく査定すると黒に近いグレー会社であ
ったことが判明した。
物語の背景となっているIT業界に限らず、会社勤めという
のはある程度の試練を伴うものだし、そんな会社勤めの経験
者としては共感もある反面、甘ったれるなと言いたくなる気
持ちも半分で映画を観ていた。
その映画は、当然のように理不尽な新入社員苛めの描写から
始まるが、ここではリーダー役のお笑い芸人のちょっと上滑
りな演技がいらいら感を一層高める感じがして、それが意図
的かどうかは別として映画の世界には入り易かった。
そして物語には、理不尽なリーダーだけでなく、尊敬すべき
先輩やライヴァルやマドンナもいて…
というお話だが、実は映画の見所はそれだけではなくて、原
作の経緯通り主人公が2チャンに窮状を訴えたことから、そ
の書き込みを表示する画面や用語の解説、さらにはかなりヘ
ヴィーなCGIなども盛り込まれて、正にIT満載の作品に
仕上げられている。
その一方で、『機動戦士ガンダム』や『三国志』などの引用
でオタク気分も満載になっている。因に『ガンダム』の引用
では、星山博之、荒木芳久、それに松崎健一の名前がエンド
クレジットに掲載されていたようだ。
出演は小池徹平、マイコ、品川祐、田辺誠一、田中圭。田中
は『TAJOMARU』と同じような役柄なのも面白い。他に、森本
レオ、北見敏之、朝加真由美らが共演している。
監督は、2006年『シムソンズ』などの佐藤祐市、脚本は、今
春公開された『ROOKIES−卒業−』などのいずみ吉紘。
物語の結末にはカタルシスもあって、特にこの不況下で働く
若いサラリーマンには応援歌にもなりそうな作品に思えた。

『谷中暮色』
幸田露伴の小説『五重塔』の主題にもなっている東京谷中の
感応寺(現天王寺)に建てられていた五重塔を巡る物語。
東京の上野と本郷の間にある谷間を谷中と呼び、そこには霊
園や寺院が数多くあって、昔からの風景が近年まで残されて
いた。主人公は、そんな谷中を記録したホームムーヴィを探
し出しては修復して上映するNPOのメムバーの1人。
そしてそのNPOグループでは、1957年に焼失した谷中五重
塔を写したフィルムを探していたが…
作品は、実際の五重塔を憶えている人たちへのインタヴュー
を集めたドキュメンタリーの要素もあり、その一方で露伴の
小説を映像化した部分や、さらにそこに主人公たちのラヴス
トーリーも語られるという欲張ったものになっている。
ただしその全てが充分に語られているかというとそうでもな
くて、特にラヴストーリーの部分に関しては、挿入されるチ
ンピラ同士の争いのような無くてもいいシーンも含めて、結
末などが意味不明のものになってしまっている。
因に本作は、今年2月のベルリン映画祭に招待されているも
のだが、その時の上映時間は129分、それが今回の試写会で
は107分に再編集されていた。つまり約20分がカットされて
いる訳で、その辺で話が中途半端になっている可能性はあり
そうだ。
とは言え、谷中の五重塔に関してはそれなりにいろいろな角
度から語られたものになっており、特に地元の人たちが語る
五重塔への思いには興味深いものも多く、その点では面白く
観られた作品だった。
そして最後に登場する実写の映像には、かなりの衝撃を受け
た。

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09月20日(日)
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