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On the Production
by 井口健二
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■エスター、イートリップ、黄金花、眠狂四郎・勝負、パブリック・エネミーズ+他
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『エスター』“Orphan”
今年8月30日付の製作ニュースで“The Girl With the Red
Riding Hood”という作品の計画を紹介している脚本家デイ
ヴィッド・レスリー・ジョンスンによるホラー作品。
物語の中心となるのは、夫婦と子供2人の一家。その妻が3
人目の子供を死産し、その痛手を癒すために夫婦は孤児院か
ら養子を迎えることを決断する。しかし妻にはアルコール依
存症からの脱却中という状況もあり、さらに幼い実の娘は難
聴で手話を使っている。
正直には、こんな状況で敢えて養子を迎えられるのかという
ところもあるが、しっかりしたカウンセラーが付き、その意
見に従ってのことであれば、それも許可されてしまうもので
はあるようだ。
そして夫妻が訪れた孤児院で目にしたのは、他の子供たちと
離れて1人で絵を描いている少女。その絵の才能にも注目し
た夫妻は、躊躇うことなくその少女を養子に迎えることを決
めるのだが…その少女には何処かおかしなところがあった。
この発端だと、まず思い付くのは鳥類のカッコウのように実
子たちを両親から引き離し、自分が中心に居座るという展開
だが、この映画はそんな生易しいものではない。それは家族
の心の隙間を突いて、周到且つ巧妙に一家を締め上げて行く
のだ。
出演は、『縞模様のパジャマの少年』などのヴェラ・ファー
ミガ、『エレジー』のピーター・サースガード、『スター・
トレック』でジェームズ・T・カークの少年時代を演じてい
たジミー・ベネット、さらに実際に聴覚障害者だというアリ
アーナ・エンジニア。
そしてエスター役を見事に演じるのは、7歳から演技をして
いるというイザベル・ファーマン。彼女なしにはこの作品は
成り立たなかっただろう。特に終盤の変貌ぶりは見事だ。他
に『ER』のCCH・パウンダーが共演している。
純粋には犯罪映画のジャンルかも知れないが、演出や物語の
展開は間違いなくホラーのテイストになっている。特に何か
が起きそうでびくびくしながら歩き回るシーンなどには、正
にホラー映画の恐さが見事に描かれていた。
監督は、2005年にパリス・ヒルトンの出演で話題になったリ
メイク作品『蝋人形の館』のハウメ・コジェ=セラ。その作
品からは桁違いに上手くなったことは確かだろう。次回作に
は“Unknown White Male”というリーアム・ニースン主演の
スリラーが計画されている。
それからこれは重大なネタバレになるけれど、この作品を観
ていて、2003年9月に紹介した『マッチスティック・メン』
を思い出した。脚本家はそれにインスパイアされたのかな。
本作はそのホラー版といったところ。つまりこの仕掛けは、
映画では初めてのものではない。(この部分、他言無用)

『イートリップ』
フードディレクターとして活躍する野村友里が、自らの活動
に共鳴する人々を巡って日本の食について描いたドキュメン
タリー。因に題名は英語表記で“eatrip”とされているもの
だが、これは「人生とは食べる旅」を標榜する野村の造語の
ようだ。
食がテーマのドキュメンタリーでは、今年4月に『キング・
コーン』を紹介しているし、それ以前には“Unser taglich
Brot”というドイツ作品も観ているが、日本人の食に対する
感覚は独特のようにも感じていて、その辺が変に出たら辛い
なと思いつつ試写に赴いた。
ところが作品は、確かに日本人特有の見方で作られてはいた
が、食に対する真摯な態度と真剣さで、観ていて居住まいを
正したくなるような、そんな感じにまでなってしまった。
作品は、飼っている鶏を潰して調理するところから始まり、
築地市場の仲買人や削り節の店主などプロの食材供給者の発
言が続く。なおイントロでは、画家と記された人の発言が僕

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09月13日(日)
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