ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■ドリーム・オブ・ライフ、フラミンゴ/地球の秘密、宇宙へ、吸血少女対少女フランケン、空気人形、バーダー・マインホフ+製作ニュース
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『パティ・スミス:ドリーム・オブ・ライフ』
                   “Dream of Life”
1946年生まれのアーティストで、パンクの女王とも呼ばれた
女性ロッカー=パティ・スミスの半生を追ったドキュメンタ
リー。
主には1995年から11年間に亙って、写真家のスティーヴン・
セブリングが撮影したフィルムを基に、スミスの交流関係や
家族関係などが描かれ、そこに彼女自身の声でいろいろな思
いが綴られて行く。
しかしそこには、盟友だったロバート・メイプルソープや、
マネージメントを担当していた弟トッド・スミス、ギタリス
トの夫フレッド・スミスの死など、実は撮影開始の前に起き
ていた悲しい出来事の陰が色濃く残っている。
そんな中に、劇作家で『ライトスタッフ』などに出演した俳
優でもあるサム・シェパードとの交流を綴ったシーンは、映
画ファンにも興味深いものだ。ここではミュージシャンでも
あるシェパードの音楽への造詣の深さも覗かれて面白い。
その他、アルチュール・ランボー、ウィリアム・ブレイク、
ミッキー・スピレーン、ウィリアム・バロウズ、エドガー・
アラン・ポーなどの詩人や作家への言及や、音楽関係ではボ
ブ・ディラン、マリア・カラス、ビリー・ホリデイらへの思
いを語るシーンも興味深いものがあった。
その一方で、ジョージ・W・ブッシュに対する強烈な批判を
込めた歌詞の曲を歌うシーンや、バグダッド、エルサレムを
訪問しているシーンなどには彼女の政治的な姿勢も明確に描
かれている。
さらに、両親や弟、夫などの家族やメイプルソープについて
思い出を語るシーンや、夫の跡を継いで彼女のバンドでギタ
リストを務める息子を紹介するシーンには、1人の女性や母
親の姿も垣間見せている。
という作品だが、実は映画の中では上記のいろいろな事柄が
実に取り留めもなく描かれている。しかしそれが彼女=パテ
ィ・スミス自身を明確に描き出す。その描き方は見事なもの
だ。1人の人間をここまで見事に描いた作品も珍しいとすら
感じられた。僕は別段彼女のファンでないが、それでもこれ
は楽しめた。
なお映画には、以前に行われたジャパンツアーの様子なども
挿入されていて、日本人にも面白い作品と言えそうだ。

『フラミンゴに隠された地球の秘密』“The Crimson Wing”
ディズニーが「ディズニーネイチャー」という新たなブラン
ドで発表するドキュメンタリー・シリーズの第1作。
ディズニーのドキュメンタリーでは、5月に『モーニング・
ライト』という作品を紹介したが、その時も触れた1950年代
の「自然の冒険」シリーズを髣髴とさせる新シリーズの展開
が始まった。
最初にいつものシンデレラ城がシルエットで登場するが、実
はそれは…。というロゴマークで始まる新シリーズの第1弾
は、アフリカの大地溝地帯に暮らすフラミンゴが主人公。そ
の赤く染まった姿の秘密や、塩湖で暮らす様子が描かれる。
その内容自体は、普段からこの手の作品が好きでテレビなど
でも結構見ている自分としてはあまり目新しいものはなかっ
たが、それらが大画面で観られるのは、鑑賞に集中もできて
嬉しいものだ。特に、赤に染まったフラミンゴの美しさは格
別だった。
なお、日本語版のナレーションは宮崎あおいが担当している
が、優しい口調がお姉さんが弟妹に語り掛ける感じで、特に
子供の観客には好ましい感じがした。因に日本公開は日本語
版のみで行われるようだ。
ディズニーのドキュメンタリーは、以前はドラマティックに
描こうとするあまりの作為的な構成演出が問題にされたこと
もあったが、最近ではドキュメンタリーの全体がそういう傾
向になっているようだ。そんな傾向の中での本作にも多少の
作為はありそうだが、まあそれも許せる程度のものだ。

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06月21日(日)
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