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On the Production
by 井口健二
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■屋根裏のポムネンカ、山形スクリーム、妻の貌、クヌート、3時10分、決断のとき+製作ニュース
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※
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『屋根裏のポムネンカ』
“Na půdě aneb Kdo má dneska narozeniny?”
チェコの人形アニメーター=イジー・バルタの最新作。因に
バルタの前作は1989年だがこれは短編で、長編作品は1986年
以来のことだそうだ。ただし、1996年に長編映画化を目指し
ていた『ゴーレム』のパイロット版が映画祭で上映されてい
るようだ。
物語は、とある家の屋根裏が舞台。そこでは、可愛い女性の
人形ポムネンカと粘土の塊やクマのぬいぐるみ、操り人形ら
が暮らしていた。その毎日は、ポムネンカがケーキを焼くと
ころから始まり、それぞれには列車の運転や駅長、ドラゴン
退治などの仕事があった。
そして屋根裏には、列車に乗る多くの人形たちがいて、また
ラジオ局もあって重要なお知らせなどが放送されていた。と
ころがある日、その放送から不審な声が流れ始める。その声
はポムネンカに一方的な思いを告げるのだが…
実は、屋根裏の反対側には別の邪悪な勢力が蔓延っており、
その連中のボスがポムネンカを狙っていたのだ。そしてポム
ネンカの暮らす一角でいろいろな事件が起き始め、ついには
ポムネンカが拉致されてしまう。
主人公の名前のポムネンカは、チェコ語で「思い出」という
ような意味だそうだ。つまり屋根裏に置き去りにされた人形
やガラクタたちが魂を持って、日々の暮らしや冒険を繰り広
げる物語。そしてその背景なども全て屋根裏に置かれたもの
で表現される。
その背景などの造形がまた見事で、それはネタバレになって
しまうからここには書かないが、ガラクタを材料に成程と思
うものがいろいろな事象に変化して描かれて行く。そこには
子供の頃の楽しい夢や想像、そして時には悪夢も混ざってい
るようだ。
チェコの人形アニメーションには伝統的なものがあるが、そ
の伝統を正当に受け継いだ作品と言える。素朴な味わいの中
に、置き去りにされた物への愛情やちょっと風刺的な面も描
かれた素晴らしい物語だった。
CGI全盛のアニメーション界で、手作りの人形アニメーシ
ョン製作の大変さは想像以上のものだろうが、監督は1948年
生まれとのこと、未完の『ゴーレム』などまだまだ新作を生
み出して欲しいものだ。
なお本作は本国チェコでも今年3月に公開されたばかりの作
品で、日本公開は、夏休みに東京渋谷のユーロスペース。ま
た公開期間中にはバルタの全作品が観られるレイトショーも
行われるようだ。
因に、原題の英訳は“In the Attic or Who Has a Birthday
Today?”だそうだ。
『山形スクリーム』
2005年7月に前作の『さよならCOLOR』を紹介している
竹中直人監督による新作。
竹中の監督は本作が6作目になるが、1994年の『119』以
外は原作もので、本作はそれ以来のオリジナル作品となる。
ただし『119』も本作も他の人の脚本によるもので、本作
では、BS-i放送のコメディの監督やインディーズ作品の脚本
歴のある継田淳の脚本を映画化しているものだ。
物語は、山形県の山奥にある御釈ヶ部村というところが舞台
となる。そこには、800年前の源平の合戦を逃れてきた落ち
武者を惨殺したという歴史があり、その呪いを封じるための
祠も建てられていた。
ところが村では、縁結びのご利益もあるというその祠を中心
にした観光地化が計画され、それに乗せられた主人公たち東
京の女子高生の一団が村を訪れる。そしてその日は、観光地
化のシンボルとしてスーパー祠を建設するため古い祠を取り
壊す日でもあった。
ということで、後は大方の想像の通りの展開となるものだが
…物語の展開は御都合主義の満載で、それなりにサーヴィス
精神の旺盛さというか、いろいろなものがごった交ぜ。それ
はその手の作品が好きな人には好まれそうなものだ。
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06月14日(日)
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