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On the Production
by 井口健二
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■童貞放浪記、8月のシンフォニー、のんちゃんのり弁、花と兵隊、僕らはあの空の下で、キャデラック・レコード、30デイズ・ナイト
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『童貞放浪記』
1962年茨城県生まれ、東京大学卒、ブリティッシュコロムビ
ア大学留学を経て東大大学院を満期退学。大阪大学の講師→
助教授を勤めながら東大博士号を取得、さらにちくま新書で
「恋愛論」の著作もあるという比較文学者・小谷野敦原作に
よる小説の映画化。
上記の経歴の作者が、東大卒で著作もあり、地方大学の新任
講師/30歳童貞という主人公を描く。
原作は2007年発表だそうだから作者45歳の時の作品というこ
とになるが、何と言うかお話は幼いし、主人公も含めて登場
人物はステレオタイプだし、物語に新鮮味もないしで、原作
を読んではいないが映画と同じ物語ならそれほど優れている
とは思えない。
とは言うもののこの原作が、それなりの文芸雑誌に発表され
て話題になったと言うのだから、日本文学のレヴェル低下と
言うか、これではケータイ小説も嘲笑えないな…という感じ
の代物だ。もっとも話題になったというのは、評価されたの
とは違うのだろうが。
大体主人公が二言目には「東大出なんて…」と言うのだが、
これが主人公、もしかしたら原作者も気付いていないのかも
知れないが実に鼻持ちならない。自分も周囲に東大出の知人
は多いが、こんな人にはお目に掛ったことがないような人物
なのだ。
ただまあ、そんな頭でっかちの主人公について、多分頭でっ
かちな作者が描いた作品を、映画化ではそれなりに上手く計
算してまとめていることには感心した。実際、映画の内容は
原作本の出版社サイトに載っている作品の概要とはかなり違
うものだ。
そしてそんな主人公を、映画では『イヌゴエ』などの山本浩
司がそれなりに観られるように演じて見せている。また相手
役には、元グラビアアイドルの神楽坂恵が扮して体当たりの
演技を見せる。他に、堀部圭亮、木野花らが共演。
脚色は、劇団主宰の傍ら作家として三島由紀夫賞、芥川賞に
もノミネートされたことがあるという前田司郎が担当。映画
の脚本は初めてのようだが、本作の出来はこの脚本によると
ころが大きそうだ。
監督は、2006年『AKIBA』という作品が評価されている
小沼雄一(苗字は「こぬま」ではなく「おぬま」と読むらし
い)。それ以来の作品となるが、本人には別にも仕事がある
らしく、この程度の寡作は仕方がないようだ。
いずれにしても、物語自体は大したことはないが、そこに描
かれた人間にはそれなりに考えさせられるところもあるし、
人の人生にはこんなことも有るのかなあと言う程度には観る
ことができた。

『8月のシンフォニー』
2002年2月の路上ライヴ開始から1年半後には渋谷公会堂の
舞台に立ったというシンガーソングライター川嶋あいの半生
を描いたアニメーション作品。
主人公は、地元福岡では名前の知られた前座歌手だったが、
高校進学を前に母親の決断で東京の芸能コースのある学校に
進学することになる。そしてプロダクションにも所属してス
ター歌手を目指すが挫折。しかしめげない主人公は路上ライ
ヴを開始する。
その路上ライヴにとあるベンチャー企業の社長が目を留め、
その手引きで学生グループの支援を得るようになる。そして
路上ライヴ1000回、CD手売り5000枚、渋谷公会堂でのリサ
イタルを目標に掲げて活動して行くが…
物語は実話に基づくとのことでそれならそれで仕方ないが、
実にとんとん拍子に進んで行くお話で、世の中には本当に運
の良い人もいるものだと感心させられてしまった。
もちろんそこには涙の秘話も含まれてはいるが、全体的には
それを自ら乗り越えているものでもなく、常に周囲に支えら
れてその周囲の人たちが彼女のためにかなりの犠牲も払いな
がら、でもまあその人たちも結局は成功して利益が得られる
ようになる物語だ。

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06月07日(日)
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