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On the Production
by 井口健二
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■HACHI、美代子阿佐ヶ谷気分、佐賀のがばいばあちゃん、蟹工船、湖のほとりで+製作ニュース
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『HACHI』“Hachiko: A Dog's Story”
1987年に新藤兼人脚本、神山征二郎監督により映画化された
『ハチ公物語』のアメリカ版リメイク。と言うより、当時日
本を訪れていた日系アメリカ人の女性がその物語に感動し、
新たなアメリカ版の脚本を得て製作映画化した作品。
その脚本に、俳優のリチャード・ギアと監督のラッセ・ハル
ストレムが賛同し、ギアは製作を買って出てまでの主演とな
っている。
元々の「実話」は、戦後の民主主義教育を受けてきた僕らに
は、戦前の軍国主義者が忠君物語とするために美談に仕立て
上げた物語としか映らなかったものだが、それを新藤監督が
脚本にし、さらにアメリカナイズすることで、大元のイメー
ジは払拭された感じだ。
そして今回のアメリカ版の脚本では、敢えて発端を日本に置
き、西洋犬とは異なる日本犬(秋田犬)の特徴なども描き込
むことで、特に犬好きの心を存分に掴み取る作品に仕上げら
れている。
そしてその脚本から、『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』や
『サイダーハウス・ルール』『ショコラ』などのハルストレ
ム監督が、いつもの優しさと淡々とした筆致で丁寧に物語を
描き上げている。
オスカー候補にも名を連ねる名匠が何故日本映画のリメイク
とも思えるところだが、監督は元々がギアと共に愛犬家とし
て知られているとのことで、そういうコンビならこれも頷け
るものだろう。少なくとも愛犬家には堪らないお話だ。
物語は、山中の寺と思われる場所から1匹の秋田県の仔犬が
送り出されるところから始まる。その仔犬は海を渡りアメリ
カの東海岸にやってくるが、檻に付けられた荷札が破れ、檻
も壊れてとある駅に置き去りにされる。
そこの駅に現れたのが、ちょうど出張帰りだった大学教授の
主人公。一目でその仔犬が好きになった主人公は、本当の持
ち主が現れるまでという約束でその仔犬を自宅に連れて行く
のだが…
ここからは、ほぼ原作と同じ物語が展開されるが、その間に
はいろいろとアメリカらしいエピソードも挿入されている。
そのエピソードがまた犬好きが創作したらしい素敵な物語と
なっているものだ。
因にアメリカ版の脚本は、新人のスティーヴン・P・リンゼ
イという人が担当している。
共演は、ジョーン・アレン、サラ・ローマー、ケイリー=ヒ
ロユキ・タガワ、エリック・アヴァリ、ジェイスン・アレク
サンダー、ダヴェニア・マクファデン。
ただ、プロローグに登場する寺が、映像は山形県にある山寺
のイメージなのだが、脚本では山梨県とされていたり、日本
人の僕にはちょっと引っ掛かるところもあった。別段物語の
本筋には関係ないし、どうでもいいことではあるが。

『美代子阿佐ヶ谷気分』
1971年ガロ3月号に発表された安部愼一原作漫画の映画化。
と言うより、元々が私小説のような原作を含めて安部愼一と
後に妻となる美代子の姿を描いた作品。
因に映画製作は、2004年に木村威夫監督の『夢幻彷徨』など
も手掛けたワイズ出版という会社が行っているが、同社では
表題作を含む安部作品の出版も手掛けており、最近再評価が
進んでいるとされる漫画家のプロモーションという意味合い
もある作品のようだ。
物語の始まりは1970年。福岡から上京して漫画家を目指して
いた安部は東京の阿佐ヶ谷に同郷の女性美代子と暮らしてい
た。その作品は、私生活を描いたものが中心であり、その中
で自らの不倫や、美代子と他の男性との性行為なども描こう
とする。
しかもそれらを実践の中で描くとしていたために、実践はし
たもののその後に罪の意識に苛まれる事態となったり、それ
らが重なって精神を病んでいってしまう。そんな1970年代を
漫画家として必死に生き抜こうとした男の姿が描かれる。

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04月12日(日)
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