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On the Production
by 井口健二
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■雪の下の炎、ジョニー・マッド・ドッグ、コード、マーターズ、ミュータント、伯爵夫人
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『雪の下の炎』“Fire Under the Snow”
中国軍の侵攻に対して1959年にチベット民族が蜂起した際の
平和的なデモを行ったという「罪」で逮捕され、以来33年間
に渡る獄中生活と厳しい拷問に耐え切ったチベット僧パルデ
ン・ギャツォの半生を描いたドキュメンタリー。
1996年サンフランシスコで開催された第1回チベタン・フリ
ーダム・コンサートでオノ・ヨーコらと共に、チベットの現
状と平和を訴える姿や、2006年トリノ冬季オリンピックの会
場近くで北京オリンピック開催阻止のためハンガーストライ
キを行う姿を通じて、彼が獄死した同胞らのために行ってい
る戦いが描かれる。
中国が不法支配しているチベットの問題に関する映画では、
先にアメリカ映画『風の馬』を紹介しているが、本作もその
問題を余すところなく伝えるものだ。それは、ドラマ化され
ている『風の馬』ほどには衝撃的ではないが、むしろ淡々と
した表現の中での訴える力は大きいように感じられた。
しかも本編の中で、ダライ・ラマの率いるチベット亡命政府
が北京へ歩み寄り、ハンガーストライキの中止を求めてきた
という事実などは、政治に翻弄される個人の姿も描いて、こ
の1人のチベット僧が真に訴えたいことをより明白にしてい
るようだ。
監督はニューヨーク在住の樂眞筝。外国での辛い1人暮らし
の中での心の支えになったというチベット僧の自叙伝“An
Autography of a Tibetan Monk”(邦訳題名:雪の下の炎)
を、1人でも多くの人に知ってもらいたいという気持ちで制
作した作品とのことだ。
なおこの原作となる自叙伝は、一時新潮社から刊行されたも
のの絶版となっていたが、昨年の北京オリンピック開催前に
起きたチベット紛争により注目を集め、書籍の復刊ビジネス
を展開するブッキング社の手によって復刊が行われているそ
うだ。
文化も言語も違う地域を他国が支配し圧制を強いている。こ
の単純明白な不法行為を誰も止められない。しかも、その亡
命政府すらが圧制を敷く他国に擦り寄っている。そんな中で
の孤立無援とも言える戦いを続ける1人のチベット僧の姿。
それは怪しげな英語でインタヴューに答える亡命政府のリー
ダーより荘厳なものに見えた。

『ジョニー・マッド・ドッグ』“Johnny Mad Dog”
3月12日から六本木で開催される2009フランス映画祭で上映
される作品。
内戦の続くアフリカの国を舞台に、その内戦に巻き込まれた
少年や少女たちの壮絶な姿を描く。
主人公のジョニーはマッド・ドッグと名告り反政府軍の少年
兵たちを率いている。といっても彼自身まだ15歳の少年だ。
そんな少年兵たちは麻薬の勢いで戦闘を繰り広げ、政府関係
者と見れば強奪や女性には強姦も繰り返しながら戦いを続け
ている。
一方、13歳の少女ラオコレは、戦争で下半身を失った父親と
8歳の弟と共に市街地で暮らしていたが、やがて彼女の周囲
にも戦闘が押し寄せてくる。その戦闘の中を、彼女は父親を
手押し車に乗せ、国連軍の病院に連れて行こうとするが…
その国には国連軍も進駐しているが、中立の立場を取る国連
軍は、ただ別け隔てなく傷病者の看護を行うだけで、戦闘へ
の介入はしてこない。そして少年兵たちは、その先に何があ
るのかも判らないままに、不条理な戦闘を続けていく。
脚本と監督はジャン=ステファーヌ・ソヴェール。本作の前
にはコロムビアの少年犯罪を題材にしたドキュメンタリーも
手掛けており、本作は別にあった原作の映画化ではあるが、
ドキュメンタリー・タッチの見事な映像を作り上げている。
そして本作の映画化に当って監督は、自らリベリアに赴いて
実際に兵士だった少年たちをオーディションで集め、彼らの
信頼を得るために撮影の1年前から共同生活をして必要な準
備を行ったとのことだ。

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03月08日(日)
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