ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■寝取られ男のラブ♂バカンス、旭山動物園物語、赤い糸、アライブ、ヘブンズ・ドア、女バス、空へ、チェ28歳の革命/39歳別れの手紙
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『寝取られ男のラブ♂バカンス』
             “Forgetting Sarah Marshall”
前回紹介した『無ケーカクの的中男』のジャド・アプトゥが
製作を担当したラヴ・コメ作品。
主人公は人気テレビシリーズの劇伴音楽を担当しているミュ
ージシャン。そのシリーズの主演女優サラ・マーシャルとは
5年間の同棲中で、実はシリーズの仕事には嫌気が差して、
本当は別の計画に進みたいのだが、彼女との生活のため我慢
を重ねている状態だ。
ところが、青天の霹靂で彼女から別れ話を持ち出されてしま
う。しかも彼女には他の男ができたのだという。そのショッ
クは絶大で、主人公は仕事も手に付かず、街に女あさりに出
かけても、頭に浮かぶのはサラのことばかり。
そこで、弟の勧めもあってハワイに傷心を癒すための旅行に
出るのだが、あろうことか同じホテルにサラと彼女の新しい
恋人も泊まっていた。しかしホテルのフロント係の機転で最
高のスイートルームに宿泊することになった主人公は…
親切というか、ちょっとお節介なホテルの従業員たちに囲ま
れて、主人公の傷心は癒すことができるのか、しかもすぐ傍
に元恋人がいるという状態で?
まずは普通ではないシチュエーションだが、その分、観客に
は気楽に楽しめるコメディというところだ。でもそこに描か
れる男女の関係は結構リアルで、飛んでもない状況から自分
自身で脱出しなくてはならなくなった人間の姿が丁寧に描か
れている。
『無ケーカク…』もそうだったが、この辺の人間描写の丁寧
さがアプトゥ・コメディの真骨頂と言えるのだろうか。因に
本作の脚本は、主演のジェイスン・シーゲルが手掛けたもの
で、シーゲルは挿入歌も書くなど八面六臂、その脚本をアプ
トゥが認めたものだ。
シーゲル以外の出演者は、人気テレビシリーズ『ヴェロニカ
・マーズ』のクリスティン・ベルと、ロシア出身の新星ミラ
・クニス、それに、映画『ペネロピ』に出演のラッセル・ブ
ランド。特に、クニスの可憐さとブランドのロック・ミュー
ジシャンぶりが好感だ。
なお、この原題も以前に制作ニュースで取り上げているが、
それは映画の最後に登場するジム・ヘンスン・マペッツによ
るミュージカルが本物になるかも知れないというもの。その
後の進展の情報はないが、本作ではその一部が観られるのも
貴重だ。

『旭山動物園物語』
北海道旭川にある市営の動物園が年間入場者数300万人を記
録するなど、上野を越えて日本一に輝いた。1996年には年間
26万人の最低を記録、幾度も廃園寸前にまで追い込まれた旭
山動物園の奇跡の逆転劇を描いた作品。
と言っても、逆転劇自体は、それまで動物園に無関心だった
市長が落選し、理解のある市長が当選したことにも拠るよう
だが、その新市長の許、世界初と言われる行動展示を実現す
るまでの経緯などが、かなりシビアな部分も含めて描かれて
いる。
そこには、現代における動物園の存在意義や、外来種の侵入
による日本固有種の危機の問題、さらには北海道特有ではあ
るがエキノコックスの問題など、人間と動物に関わる様々な
問題提起が織り込まれて、これだけの意識の高さを持ってい
るのも見事なものだ。
物語の原案は現旭山動物園々長の小菅正夫氏。監督はマキノ
雅彦。マキノは『次郎長三国志』に続けての作品となるが、
2006年にドラマで同園長の役を演じ、その前に園長と会って
以来の念願の作品とのことで、それ以来の丹念な取材で物語
を作り上げている。
そして脚本は、テレビシリーズ『相棒』などを手掛けた輿水
泰弘。映画脚本は初めてとのことだが、上に書いたようにい
ろいろな要素を手際良く織り込んで、しかも感動的に盛り上
げる構成は見事なものだ。
出演は、園長役に西田敏行、新人の獣医役で中村靖日、前田

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11月16日(日)
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