ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■シリアの花嫁、蘇る玉虫厨子、アンダーカヴァー、鎧−サムライゾンビ−、その男ヴァン・ダム、ミーアキャット、無ケーカクの命中男、斬
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『シリアの花嫁』“The Syrian Bride”
イスラエル/シリア境界線のゴラン高原を舞台に、その境界
線を越えて嫁いで行く女性の置かれた状況を描いた国際情勢
の縮図とも言えるドラマ。
1967年の第3次中東戦争でイスラエルに占領されたシリア領
のゴラン高原は、以来40年を越える年月を占領状態に置かれ
たままとなっている。
元々そこに住んでいたのは、イスラムでは少数派といわれる
ドゥルーズ派の人々。彼らにはイスラエルの国籍取得の機会
は与えられたが、当然それにしたがう人はまれで、大半は無
国籍の状態となっている。
そのため、仮にその占領地からシリア国内に嫁ぐと、その花
嫁には自動的にシリア国籍が付与されてしまい。以後、シリ
アとの国交のないイスラエルの占領地には行き来ができなく
なる。
そんな状況下で、シリアに嫁いでいこうとする花嫁の物語。
そのゴラン高原で行われる結婚式に花婿の姿はなく、境界線
の向こうで待つ花婿の許に行った途端、彼女は2度と家族と
は会うことができなくなってしまうのだ。
とこれだけでも充分に国際情勢の縮図と行った感じの物語だ
が、さらに花嫁の父親がイスラムの活動家で境界線地帯への
立ち入りが禁止されていたり、国際赤十字が仲介する越境の
手続きが政治介入によってトラブったり…
さらには、彼女の兄が異教徒のロシア人女性と結婚したため
に父親といざこざがあったりという、ありとあらゆる障害が
彼女に降りかかる。
国内に国境線を持たない国に住んでいると、国境線という存
在自体が容易には理解できないものになるが、特に紛争地域
では、この映画のように僕らの考えをはるかに越える事態が
発生しているようだ。
そんな事態を深刻に、しかしユーモアとペーソスも込めて描
き出している。
自分も同じ年頃の娘を持っていると、花嫁の父親の心情も判
るところだが、それよりこの作品では、全く馬鹿げたとしか
言いようのない、それぞれの国の面子や駆け引きに振り回さ
れる悲喜劇が描き出され、国家と言うものの愚かしさも観え
てくる作品だ。
出演は、花嫁の姉役に『パラダイス・ナウ』などのヒアム・
アッバス、父親役に『ミュンヘン』などのマクラム・J・フ
ーリ、そして花嫁役には、マクラムの実娘で『ワールド・オ
ブ・ライズ』にも出演のクララ・フーリが扮している。
脚本、監督はイスラエル人のエラン・リクリス。物語は、監
督自身が先に手掛けたドキュメンタリーの中の実話から発想
を得ているそうだ。

『蘇る玉虫厨子』
奈良県法隆寺の金堂に安置されている国宝「玉虫厨子」。飛
鳥時代(約1400年前)の作と伝えられるその厨子は、往時は
約4800匹の玉虫の羽根で装飾されていたと考えられるが、現
在残っているのはその一部のみ。また、扉や壁面に描かれた
装飾蒔絵も、その多くが識別できない状態となっている。
その国宝「玉虫厨子」を、現在の職人の技で復元しようとい
うプロジェクト。それは岐阜県高山市で造園業を営んでいた
中田金太氏が私財を投じて行ったもので、その心に触れた俳
優の三国錬太郎が、自ら現場も訪れて心のこもったナレーシ
ョンを添えている。
なお、三国は2003年公開の『風の絨毯』という実話に基づく
映画の中で、中田金太の役を演じて以来の知遇を得ていたの
だそうで、平成14年(2002年)に開始されたプロジェクトに
は、かなり初期の段階から関ることができたようだ。
そしてそのプロジェクトには、設計施行担当中田秋夫の許、
宮大工八野明、蒔絵師立野敏昭、錺金具師森本安之助、彫師
山田耕健らが集められ、最初は法隆寺の金堂でガラス越しに
厨子を観察することから始められる。
しかし、「玉虫厨子」は国宝であるために、彼らは直接手を
触れることはできず、その寸法を直に計ることもできない。

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11月09日(日)
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