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On the Production
by 井口健二
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■ワンダーラスト、アイズ、天使のいた屋上、猫ラーメン大将、未来を写した子どもたち、ワールド・オブ・ライズ、ホルテン、チェチェンへ
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『ワンダーラスト』“Filth and Wisdom”
女性歌手のマドンナによる初監督映画。
ロンドンでルームシェアして暮らす男1人と女2人の物語。
男はウクライナからの移民で本業は歌手だが、生計はSMの
調教師などで立てている。そして、同じアパートに住む盲目
の詩人の面倒も見ている。
一緒に暮らす女の1人は医科大を中退してインド人経営の薬
局で働いているが、アフリカで恵まれない子供たちを助ける
ことが夢だ。もう1人は、クラッシックバレーを学んでいる
が成果は上がらず、生活のためにストリップダンスを勧めら
れる。
そんな3人とその周囲の人々の姿が、マドンナ自身の若い頃
とも重なるのか、どちらかと言うと甘く優しい眼差しで描か
れる。
映画は主人公の男のモノローグで始まる。その構成は、最初
は多少迷いがあるのか混乱もしているが徐々にそれも解消さ
れて、収まるところに収まって行く。それは映画の成立の経
緯にも関わっているようだが、それなりに上手く行っている
ように思われた。
ミュージシャンとしては功なり名を遂げている人が、大上段
に振りかぶることはせずに、自分なりのスタンスで映画を作
り上げている。そんな雰囲気も心地よく感じられる。
それに加えて、マドンナが熱望し、ストーカー紛いのことま
でして出演交渉したという、カリスマ的ロマ系バンドのヴォ
ーカリスト=ユージン・ハッツの演じる主人公が瓢々として
良い感じで、さらにバンドの演奏や歌唱がフィーチャーされ
ているのも聞き物だった。
共演は、新進女優のホリー・ウェストンとヴィッキー・マク
ルア。その他、『ペネロピ』などのリチャード・E・グラン
ト、アジア系スタンダップ・コメディアンのインダー・マノ
チャ、舞台俳優のエリオット・レヴィら多彩な顔ぶれが脇を
固めている。
物語自体はよくあるものかも知れないし、演出も取り立てて
何かあるものでもないが、まあ、新人監督の分を弁えて真面
目に撮っているという感じはする作品。マドンナ本人は、ゴ
ダール、ヴィスコンティ、パゾリーニ、フェリーニに憧れて
いるようだが、確かにハリウッド映画ではないヨーロッパの
香りのする作品にはなっていた。
因にマドンナは、先にH&Mのコマーシャルの演出を手掛け
たことがあるそうで、その経験が今回の映画監督の切っ掛け
になっているようだ。

『アイズ』“The Eye”
2002年、パン兄弟監督で発表された『the EYE〔アイ〕』の
ハリウッド版リメイク。ただしこの話の大元は、手塚治虫原
作、大林宣彦監督の1977年作品『瞳の中の訪問者』だと言い
たいところだが、今回もそれは無視されたようだ。
主人公は盲目の女性バイオリニスト。5歳の時に事故により
失明した彼女は、コンサートでは指揮者の隣でソロを務める
ほどの名手となっていた。そんな彼女が、ついに角膜移植に
よって視力を取り戻す決心をするのだが…
手術も成功し、視力も少しずつ戻り始めた彼女は、同室の寝
た切りだったはずの老人が夜中に起き上がり何かの影に導か
れて立ち去って行くのを「目撃」する。そして翌朝、その老
人が昨夜息を引き取ったことを教えられる。
彼女が見たものは一体何だったのか。さらに彼女は街でいろ
いろな現象に遭遇し、また悪夢を見るようにもなる。そして
それらは、彼女に何かを伝えようとしているようにも見え始
める。
パン兄弟のオリジナルでは、墓地のシーンでの心霊写真のよ
うな仕掛けなどいろいろ楽しませてくれたが、リメイク版は
もっとストレートなホラー映画の作りで、そのような小細工
は余り講じていないようだ。この辺は文化の違いというとこ
ろなのだろうか。
それに対して本作では、瞬間に現れるものの恐怖感や交錯す
る人体の擦り抜けなど、ハリウッド映画らしいVFX的な仕

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10月12日(日)
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