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On the Production
by 井口健二
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■ファニー・ゲームU.S.A.、ぼくのおばあちゃん、むずかしい恋、カフェ代官山2、反恋愛主義、バンク・ジョブ、252(追記)
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『ファニー・ゲームU.S.A.』“Funny Games U.S.”
1997年のカンヌ国際映画祭に出品されて賛否両論を巻き起こ
したミヒャエル・ハネケ監督の問題作『ファニー・ゲーム』
を、ハネケ監督自身がハリウッド・スターを起用してリメイ
クした作品。
主演は、製作総指揮も兼ねるナオミ・ワッツ。これに『コッ
ポラの胡蝶の夢』のティム・ロス、『シルク』のマイクル・
ピット、『サンダーバード』のブラディ・コーベット、子役
のデヴォン・ギアハートらが共演している。
ハネケ監督のオリジナルは、初めて観たときには本当に何と
言っていいのか判らない作品だった。正直、嫌悪したくなる
ような作品でもあったし、それは今回このリメイク版を観て
も全く変わらない印象だ。
ただし、これが監督の言うように、現実はこんなものだとい
うことを示している作品であることは確かだし、その監督の
意図を汲み取れば、本作は正に名作と呼べるものだろう。し
かしそれを言うことにはかなりの勇気がいるものだ。
物語は、夫婦と1人息子の一家が湖畔の別荘を訪れることか
ら始まる。その家に着く前に隣家に挨拶した夫妻は、その一
家の態度に多少の違和感も感じるが、あまり気にしない。し
かしその隣家から2人の青年が主人公の家を訪ねてきたとき
から恐怖が始まる。
その青年たちは口調や物腰は柔らかだったが、夫妻に理不尽
な要求を突きつけ、それが叶わないと暴力を振るい始めたの
だ。そしてその暴力行為は次々にエスカレートして行った。
実は今回のリメイクは、俳優は変っているが物語や展開はオ
リジナルと全く変わらない。それは多分カメラアングルまで
もほとんど同じに作られているもので、監督自身はこれを、
「舞台劇のように、俳優を代えても演出は変えなかった」と
しているものだ。
従って、オリジナルを観ている人には、あえてもう1度同じ
ものを観ろとは言えないが、本作のナオミ・ワッツの渾身の
演技は見事だし、またマイクル・ピットは、『シルク』での
誠実さとは裏返しの悪意に満ちた若者を見事に演じ切ってい
る。これは凄い。
因にハネケ作品では、2005年『隠された記憶』(Cache)に
もリメイクの計画があるが、それはロン・ハワード監督が進
めるもの。ハネケ自身がリメイクしたいと思っていたのは本
作だけだそうで、しかもそのリメイクは絶対に自分ですると
決めていたそうだ。

『ぼくのおばあちゃん』
北村龍平監督『VERSUS』などの主演俳優で、2007年『GROW』
という作品で長編デビューしている榊英雄監督の新作。
1926年生れ、今年92歳の菅井きんが主演してギネスブックの
最高齢主演女優の認定を受けた作品。
“326”の名前でも知られるイラストレーターのなかむら
みつる原作による映画化。父親を早くに亡くし、母親とおば
あちゃんによって育てられた主人公が、現代の老人たちに厳
しい世の中で家族について見つめ直す物語。
主人公は住宅建設会社の営業マン。住む人が幸せになれる家
をモットーに営業成績も優秀な彼だったが、その実体は、残
業や日曜出勤の連続で息子の父親参観日にも行くことができ
ず、家族をほとんど顧みることができない生活だった。
そんな主人公だったが、家を新築しようとしている顧客一家
に老人がいることを知り、その老人が新築の家では居場所が
なくなる現実に直面する。そしてその連想から、自分を育て
てくれた祖母との関係に思いを馳せて行く。
事前には菅井きんの主演作という情報ぐらいで試写会を観に
行ったが、作品では、古き良き時代と言ってしまえば実も蓋
もないが、現代では無くなってしまった近所付き合いや他人
を思い遣る心など、素敵な物語が展開されていた。
プレス資料の中で映画監督の新藤兼人氏が、「日本映画にホ

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09月21日(日)
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