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On the Production
by 井口健二
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■臨時号(夏休遠征報告)
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※今回は、夏休み中の8月18日−24日の間に関東−九州の※
※あちらこちらを見学してきましたので、臨時にその報告※
※をします。ページの趣旨とは多少異なりますが、お付き※
※合いください。なお、映像関係の話題も少しあります。※
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まず8月18日、19日の両日は、SF作家クラブ・開田裕治
会員のご斡旋で、茨城県東海村と筑波研究学園都市にある高
エネルギー加速器研究機構(KEK)の施設を見学した。
この内、18日に見学した東海村の施設はまだ建設途中で、
これが年内に完成し来年運用が始まると、一部は放射能を帯
びて立入禁止になってしまう場所へも見学が許可されたもの
だ。従って外部の人間がそれを見るのは、これが最後になる
だろうというものもあり、貴重な体験となった。
実際この施設では、来年以降、発生させたニュートリノを
岐阜県のスーパーカミオカンデに撃ち込む実験も予定してい
るもので、その地中に設けられた射出口は縦横5m。内面に
冷却用の配管が巡らされて、正に巨大な噴射ノズル。その奥
の方まで入れてもらえたが、こういうものが観られるとは、
思いもしなかった。
その前に見学した地下20mに巡らされた加速器では、全周
1.6kmの内のカミオカンデに向けた分岐点などを見せてもら
った。その加速器は、大きさでは世界最大ではないが、出力
エネルギーは最強になるとのことで、すでに粒子を周回させ
る試験には成功して、あとは分岐点以降を構築するだけとい
う状況のようだ。そこには、日立、東芝、NEC/トーキン
などのメーカー名の書かれた電磁コイルが並べられ、まさに
日本の強電業界が結集している感じだった。
因に、一般的に加速器で行われる実験は、原子核などの中
をさらに細かく観ようというもので、それは時計を壁に打つ
けて分解するようなものだとのこと。で、本来なら時計を分
解するにはネジ回しを使うが、原子核などの粒子を分解でき
るネジ回しは存在しないので、粒子を勢いを付けて固い壁に
打つけ、粉々になったものを拾い集めて研究する。その際、
壁に打つけるエネルギーが強いほど細かく分解できるとのこ
とだった。そのエネルギーを世界最強とする装置が建設され
ているものだ。
またこの装置は、ニュートリノの出力に関しても世界最強
となり、その内のカミオカンデで検出されるのはごく一部だ
が、射出の状態が判っているものを検出することで、ニュー
トリノの研究が進むことが期待されているそうだ。なおニュ
ートリノの研究に関しては、まだ何の役に立つかも判ってい
ないものだが、その特性などを研究してカタログにしておけ
ば、いつか誰かがその中から自分に必要なものを見つけられ
る。そのためのカタログを作る作業をしている段階と称され
ていた。
さらに今回の実験では、カミオカンデに当らないニュート
リノも大量に発生するが、その一部は射出口の周囲やカミオ
カンデの周囲や後ろでも付帯の実験が行われるとのこと、そ
の実験できる範囲は朝鮮半島にまで及ぶが、韓国からは射出
データの提供は求められているものの、費用負担については
「勝手に届くのだから」と断られているそうだ。さらにそこ
より遠くは、チベットの山中で検出の可能性はあるが、その
後は宇宙空間に飛び出すとのことで、まさに壮大な実験だ。
その他に東海村の施設では、国際協力で計画されている世
界最大の加速器の建設に向けた技術研究も行われており、加
速器を形成するパイプの内面を微細に研磨する実験なども見
学した。これには日本とドイツが技術を競っているそうで、
それぞれ所定のレヴェルに達したものを要所ごとに採用する
とのこと。ただし、建設場所には日本も立候補しているが、
ロシアが有力になってきているそうだ。
* *
翌19日は、つくばエクスプレスのつくば駅に集合して筑波
研究学園都市の施設を見学した。
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09月10日(水)
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