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On the Production
by 井口健二
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■同窓会、天安門、落語娘、次郎長三国志、コレラの時代の愛、ホット・ファズ
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『同窓会』
NHK大河ドラマ『新選組』などに出演の俳優宅間孝行が、
2007年9月に紹介した『ヒートアイランド』などの脚本家サ
タケミキオとして監督脚本を手掛け、主演した作品。
永作博美の共演で、離婚した夫婦の機微が描かれる。
2人は高校時代からの友人同士。主人公の克之は監督を目指
して映画研究会で頑張っているが、その被写体の多くは雪と
いう名の同級生だった。しかしその彼女は、いつも別の男子
生徒と一緒で、克之にはチャンスが訪れそうもない。
そんな状態のまま卒業して、それぞれ東京に出てきた2人だ
ったが、あるきっかけで再会し、ついにプロポーズした克之
に雪はOKと応えてくれた。そして、その時は助監督だった
克之もやがて監督作品をものにし、その成功でプロダクショ
ンを興すまでになる。
ところが芸能界の誘惑の中で、克之は出会った女との浮気が
本気になってしまう。そして離婚を切り出した克之に、雪は
あっさりと承諾してくれるが…
映画の半分は2人の故郷とされる島原が舞台となり、故郷の
情のようなものも濃く描かれた物語が展開する。そこでは、
特に雪の傍に居た男子生徒の存在が大きく、後半ではその所
在捜しの話もタイミングよく挿入されてくることになる。
『ヒートアイランド』の時も感じたが、サタケミキオという
脚本家は、日本には珍しく理詰めで物語を作る人のようだ。
その部分では実に納得のできる話だったし、恐らくほとんど
の観客は最後にハタと膝を打つ作品になっているものだ。
ただし、物語の中で一緒にいた男子生徒の種明かしは良いと
しても、もう1点の種明かしは少し気に入らなかった。実際
に物語の展開の中で、克之が電話で受ける報告には最初から
違和感があったし、僕はこういう誤解はしなかったと言うと
ころだ。
つまり、その誤解に基づく主人公の行動が、僕には全く解せ
なかった訳で、その影響を引き摺って映画の鑑賞中はかなり
退いてしまってもいた。結局その点で言えば、克之がこの誤
解をしてしまう必然性が映画の中に充分には描き切れていな
かったと感じる。
それに、いずれにしても人の生き死にを、このように軽々に
コメディにしてしまうのも、僕にはちょっとどうかと思って
しまうところだ。世間一般には、そんな風潮が蔓延している
ことは確かかもしれないが。

『天安門、恋人たち』“頤和園”
一昨年のカンヌ映画祭で上映されて物議を醸した中国映画の
第6世代の旗手とも言われるロウ・イエ監督による2006年の
作品。
映画祭での上映が政府の事前許可を得ていなかったこともあ
って、その後、中国政府からは「技術的に問題がある」との
理由で国内上映が禁止され、監督には5年間の表現活動禁止
の処分が出された…という問題作が、北京オリンピック開催
の今年公開される。
物語は、1989年6月の天安門事件を背景に、当時の北京に暮
らす大学生の姿を描く。
主人公は、地方から上京してきた女子学生のユー・ホンと、
彼女が好きになった男子学生のチョウ・ウェイ。2人は、自
由と民主化と改革を求める嵐が吹き荒れる学園で、狂おしい
までに愛しあうが…その先には、政府による激しい弾圧が待
ち構えていた。
そして映画は、その後の2人の行動なども描いて行くが、基
本的にはロウ・イエ監督もその一員だったという、天安門事
件当時の北京の大学生の姿を描いたものだ。
ただし、表現活動禁止という処分には政府の相当の嫌悪感を
感じるものだが、かなり深刻に描かれているのかと予想して
いた天安門事件の部分は意外なほど淡泊で、かえって過敏な
中国政府の態度に驚かされるところだった。
それより本作は、自由への願望に踊らされた当時の学生たち
の生態を描くもので、その意味での青春ドラマとして観るこ

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05月25日(日)
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