ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■セルラー・シンドローム、バカバカンス、敵こそ我が友、キング・ナレスワン、ミー・マイセルフ、ST3、シチズン・ドッグ、ダイブ!
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『セルラー・シンドローム』“วิดีโอคลิป”
5月31日に開催されるタイ式シネマ・パラダイスの1本とし
て上映される作品。
タイのティーンエイジャーには「盗撮」への興味が蔓延して
いるのだそうだ。実際にタイの大学生未満が2006年1年間に
「盗撮」とサーチエンジンで検索した回数は250万件に達す
ると言われ、その世代の人口がどれほどかは判らないが由々
しき問題であるらしい。
そんな状況を踏まえて作られた作品。実は題名からは単純な
ホラーを連想して、『着信あり』のパクリだったら困るなと
思って観に行ったが、実体はもっと深刻な、社会性の高い作
品だった。
物語は、1人の女子高生が携帯電話を握って自殺する衝撃的
なシーンから始まる。次に物語は大人の男女の話へと進み、
最初のシーンとの関連は明かされないままとなる。そして、
徐々にその関連が明かされて行くことになるものだ。
先にホラーを連想したと書いたが、映画が始まってからもそ
の作りはホラーの乗りで進んで行く、その流れが徐々に現実
に摺り替わるものだが、その構成はそれなりにうまいと感じ
られた。
この手の作品では、普通は現実からホラーに入って行くもの
だが、その逆では後から出てくる現実シーンをかなりしっか
り撮らなければならず、これは案外難しそうだ。因に監督の
前作はホラーだったのだそうで、そちらのテクニックは充分
だったようだが。
出演は、元ミュージシャンのパウポン・テープハサディン・
ナ・アユタヤーと、この映画のために発掘されたという現役
女子大生のガームシリ・アーシラルートシリ。特にガームシ
リは、ちょっと竹内マリアにも似た日本人的な顔立ちで評判
になりそうだ。
それにしても、画像の流出の様子などには、この春に芸能欄
を賑わした香港の映画スターのPCからの流出事件を思わせ
るものもあって、製作年度は昨年の作品だが、香港の事件を
予言していたような感じもした。
と言うか、先にこの映画を観ていたら、香港の映画スターも
もう少しはPCの修理に気を使ったかも知れない。そんな意
味での警鐘にもなりそうな作品だった。

『バカバカンス』
フリーの助監督として、唯野未歩子監督の『三年身籠もる』
や、富樫森監督の『あの空をおぼえている』にも参加してい
る宮田宗吉の監督デビュー作。宮田は、本作の脚本も自ら執
筆しているものだ。
上映時間78分。ちょっと人をおちょくったようなタイトル。
日本映画でこの手のものは、あまり良い印象を持たない。で
も、まあ時間が合えば観に行くのが僕の信条と言うことで…
と言うときに、案外な拾い物に出会えると嬉しくなる。これ
はそんな作品だった。
物語の主人公は、オムライス作りには自信があるらしい独身
のコック。同棲していた女性は別の彼氏のところに行ってし
まったが、いまだに表札から彼女の名前は消せないでいる。
そして留守電に残った彼女の声を聞きながら夜食を食べてい
る。
そんな主人公の勤めていたレストランが、オーナーの金の持
ち逃げで閉店。一方、彼氏に振られて元カノの女性が戻って
くる。そこに、元の同僚がオーナーの妻の車を借りて現れ、
元カノも乗せて、逃げたオーナーの逃亡先を探すことになる
が…
つまらないギャグや奇を衒った演出も無しで、基本的に真面
目に物語を描いていることに好感が持てる。しかしこのシチ
ュエーションでは、傍から見れば可笑しいことは沢山ある訳
で、その辺のユーモアが自然に描かれているのも作品の良さ
と言えそうだ。
それにこのシチュエーションの中で、男性主人公の心情など
もいろいろ考えられていて、その辺もよく理解できるものだ
った。

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04月27日(日)
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