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On the Production
by 井口健二
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■メモリー〜君といた場所〜、シャークウォーター、きみの友だち *熊本遠征記後編
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※
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『メモリー〜君といた場所〜』“รักจัง”
5月31日に開催されるタイ式シネマ・パラダイスの1本とし
て上映される作品。
人気アイドルの男性が山中のドライヴで事故に遭い、身体は
異常なかったが記憶を喪失してしまう。それを偶然発見した
女性パパラッチが素性を隠して接近し、スクープをものにし
ようとするが…
記憶喪失というと、最近ではアルツハイマー症絡みの作品が
数多く作られているが、この作品で描かれるのはそのような
現実的なものではなく、もっとオーソドックスな事故による
記憶喪失。
その事故による記憶喪失物では、1942年製作の『心の旅路』
が頭に浮かぶ。『失われた地平線』などのジェームズ・ヒル
トン原作を、マーヴィン・ルロイ監督、ロナルド・コールマ
ン、グリア・ガースン共演で映画化したこの作品は名作とし
て名高いものだ。
と書いただけでかなりのネタバレになってしまう。つまりこ
の作品が描くのは、2度の事故によってその間の記憶を再度
失ってしまった男性と、その間に巡り会った女性の物語とい
うものなのだが、この作品はこのオリジナルを巧妙に現代に
アレンジしている。
しかも、主人公の男性が人気アイドルと女性がパパラッチと
いうのもうまい捻りで、オリジナルの切なさとは別の、現代
らしい心の葛藤が巧妙に描かれて行く。
そしてその舞台が、僕らのあまり知らないタイ山岳部という
ロケーションも美しく心に染みるものだった。
主演は、役名と同じ「フィルム」の芸名で、タイでは人気ア
イドルのラッタプーム・トーコンサップと、日本のファッシ
ョン雑誌などにも登場しているモデル/女優のポーラ・テイ
ラー。この2人が等身大で恋物語を演じている。
そしてその脇を固めるのは、見るからにお笑いの人という感
じのイード・ポーンラーンサオーンと、女性コンビのラーラ
ーとルールー。特にこの女性コンビがかなり飛んでもない演
技を見せてくれる。
この種の物語で脇役にコメディアンを使うのは日本映画でも
よくあることだが、これが案外難しい。本作でも最初はちょ
っと浮いているかなとも感じたが、それがだんだん填ってく
るのは、かなり強引ではあるが納得できた。
『心の旅路』は、原作も映画化も著作権は切れているはずだ
が、本作はそのリメイクではないにしてもインスパイアはさ
れたと考えられる。しかもそれを下敷きに見事に現代にアレ
ンジした作品と言えるもので、その点では嬉しくも感じられ
たものだ。
『シャークウォーター』“Sharkwater”
8歳の時のフリーダイビング中に遭遇したサメの姿に魅せら
れたという海洋生物学者で、水中カメラマンのロブ・スチュ
ワートが、サメの美しさを世界に広めるために作り始めたド
キュメンタリー。しかし作品は思わぬ展開を見せる。
子供の頃からサメが好きだったと言う監督は、純粋にサメの
美しさを求めて作品を撮り始めたようだ。しかし、そのサメ
を撮影するためコスタリカのココス諸島のサメ棲息地に向か
った船には環境保護活動家が乗り組んでいた。
そしてその航路で彼らはサメの密猟に遭遇し、それを止めよ
うとした活動家たちは、中国料理で珍重されるフカヒレを巡
ってその海域で繰り広げられる裏ビジネスの実体に迫ること
になってしまう。
さらには、その裏ビジネスで暗躍する台湾マフィアや彼らと
結託する政府・警察との対決など、アクション映画さながら
の展開となる。
実のところ、この環境保護活動家なる連中が、グリーンピー
スとは別の、おそらく日本の調査捕鯨も妨害して日本政府か
らも訴追されている連中と思われ、その辺は日本人としては
ちょっと考えてしまうところもあったが、台湾マフィアの存
在など今まであまり考えていなかった事柄も紹介されていて
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04月20日(日)
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