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On the Production
by 井口健二
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■奇跡のシンフォニー、ハブと拳骨 *熊本遠征記前編
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※
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『奇跡のシンフォニー』“August Rush”
フレディ・ハイモアの主演で、アカデミー賞の主題歌賞にも
ノミネートされた音楽映画。
赤ん坊の時から孤児院にいて、11年を過ごしてきた少年が、
心の中に湧き上がる音楽の力に従って、まだ見ぬ両親を探し
始める。
それは11年前の満月の夜に、1夜だけ出会ったチェロ奏者の
女性とロックミュージシャンの男性の恋。しかしその出会い
は、2人を音楽の道から遠ざけることになってしまう。そし
て11年後、少年の行動が奇跡を起こして行く。
このチェロ奏者の女性役を、『M:I: 3』に出ていたケリー・
ラッセルが演じ、ロックミュージシャンの男性役を、同じく
『M:I: 3』に出演のジョナサン・リース=マイヤースが演じ
ている。他に、テレンス・ハワード、ロビン・ウィリアムス
らが共演。
ハイモアとウィリアムスの共演ということでも充分に魅力の
ありそうな作品だが、この作品の最大の魅力は何と言っても
音楽。全編にちりばめられた40曲とも言われる既存及び新作
の音楽が、見事なハーモニーを作り出している。
その音楽も、クラシックからゴスペル、ロックまで、多様な
ジャンルに跨がるもので、僕は音楽が趣味という者ではない
が、ヴァラエティに富んだ音楽には大いに魅力を感じた。さ
らに、それらが一体化して行く音楽の構成も素晴らしく感じ
られたものだ。
しかもこの作品の脚本を書いたのは、1981年『ニューヨーク
1997』や、1991年『フック』などのニック・キャッスル
と、『フック』や2003年『トゥームレイダー2』などのジェ
ームズ・V・ハート。ジャンル専門と思っていた人たちが、
意外な面を見せてくれている。
そういえば、『エルム街の悪夢』のウェス・クレイヴン監督
も、メリル・ストリープ主演の『ミュージック・オブ・ハー
ト』なんて音楽映画を監督したことがあるから、これが特に
変という訳ではないのかも知れない。
それに、今回の2人は脚本を提供したものだが、映画の中に
はファンタスティックな雰囲気のところも多々設けられてお
り、その辺の感覚では、なるほどジャンル映画の人たちとい
う感じもしたものだ。
正直に言って、ストーリー展開の中にはファンタシーと割り
切る必要のある部分も多少はあるが、クライマックスの音楽
とドラマの両面から盛り上げられる演出には、スクリーンが
ぼやけて見えてしまうところもあった。非常に特殊なシチュ
エーションの物語ではあるが、面白く観られた作品だ。
『ハブと拳骨』
昨年の東京国際映画祭コンペティション部門に出品された作
品。
ベトナム戦争当時の沖縄を舞台に、駐留米軍やその他との折
り合いの中で暮らす沖縄人一家の姿が描かれる。
主人公は三線を弾かせたらかなりの腕のある若者。しかし、
英語が多少話せることから、基地の兵隊に取り入って物資の
横流しなどで小金を稼いでいる。一方、彼の母親は沖縄そば
店で生計を立てており、その店には彼女を母と呼ぶ若い女性
もいた。
そして1人の男が刑務所から帰ってくる。その男は町の顔役
の許で用心棒のようなことをしているが、その男もまた彼女
を母親と呼んでいた。そんな彼女を母親と呼ぶ3人は、お互
いを兄弟のように睦まじく生活していた。
ところが、そんな彼らの生活に本土のやくざの陰が落ち始め
る。そのやくざは、沖縄である物を入手しようとしていた。
そんな連中が基地内にルートを持つ主人公に近づいてくるの
は時間の問題だったが…
特殊な状況に置かれ続けた沖縄の人たちの苦しみは理解した
いと思う。その中での本土の行ってきた役割も、映画の中の
本土やくざに象徴されるように理不尽なものであったことも
理解したいところだ。
しかし、多分作っている本人たちは戯画化しているつもりな
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04月13日(日)
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