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On the Production
by 井口健二
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■第156回
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※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
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 最近は訃報が続くが、今度はアカデミー賞受賞監督のアン
ソニー・ミンゲラの急死が報道された。状況はよく判らない
が、頚部の簡単な手術を受けた後に大量出血をしたとのこと
で、この報道通りなら医療ミスを疑うところかもしれない。
 それはともかく、ミンゲラはシドニー・ポラックと共にミ
ラージュ・プロダクションを率いて、今年のオスカー候補に
なった『フィクサー』を始め自作以外で製作に関った作品も
多く、その影響が徐々に広がっているようだ。
 その一つは、スティーヴン・ダルドリー監督、ケイト・ウ
ィンスレット主演による“The Reader”という作品。第2次
大戦後のドイツを舞台に戦犯裁判に関る物語という作品が、
すでにポストプロダクション中にも拘らずアメリカでの公開
が未定になったと伝えられている。この作品は、以前はTW
Cがアメリカ配給権を契約していたものだが、その契約がキ
ャンセルされたとのことだ。
 一方、ミンゲラ監督作品では、製作中とされていた“New
York, I Love You”は、脚本が完成していたとのことで、そ
の監督を『エリザベス』のシャカール・カプールが引き継ぐ
ことが発表されている。因に、『パリ、ジュテーム』の姉妹
編とされるオムニバス作品の監督には、日本から岩井俊二、
中国の徐静蕾の他、アラン・ヒューズ、ミラ・ナイール、ブ
レット・ラトナー、『そして、一粒のひかり』のジョシュア
・マーストン、『父、帰る』のアンドレイ・ズビャギンツェ
フ。さらに女優のスカーレット・ヨハンソン、ナタリー・ポ
ートマンらも監督として参加しているものだ。
 そして、そのミンゲラ編を引き継ぐことになったカプール
だが、実は彼が9年を置いて完成させた『エリザベス』の2
部作では、その製作にミンゲラが相当力を貸していたとのこ
とだ。その他にもミンゲラは、映画の製作が行き詰まった時
に、製作と監督の両面から打開策を見つける名手として、特
にインディペンデンス系映画会社の守り神のような存在だっ
たとも言われている。その一端が、『つぐない』の最後に自
ら出演した事にも現れているもので、この作品でもミンゲラ
は製作の初期の段階からいろいろな力を貸していたのだった
そうだ。
 この他にも、数多くの企画がミンゲラの力によって実現し
てきたとのことで、1954年1月6日生まれ54歳の死は、特に
イギリス映画界には、相当の影響が及ぶことになりそうだ。
        *         *
 次は、1930年6月31日生まれ77歳で益々盛んなクリント・
イーストウッドが、2004年『ミリオン・ダラー・ベイビー』
以来となる監督と俳優の2役に挑む計画が発表されている。
 作品の題名は“Gran Torino”というもので、今年12月に
ワーナーから公開予定とのことだ。ただしこの発表では、作
品の内容には全く触れられておらず、また脚本の進捗状況や
撮影が何時開始されるか、あるいはすでに開始されているか
などの製作状況についても、12月の公開という以外には詳し
い説明はなかったとのこと。さらにイーストウッドの役柄も
不明で、共演者についても報告されていないものだ。
 因に、イーストウッドの監督作品では、昨年3月15日付の
第131回で紹介した“Changeling”がアンジェリーナ・ジョ
リー、ジョン・マルコヴィッチらの出演ですでに撮影完了し
ており、この作品は11月7日にユニヴァーサルから全米公開
の予定になっている。従って、今回紹介したワーナー作品が
12月に公開されるとなると、『父親たちの星条旗』『硫黄島
からの手紙』が公開された2006年に続いて、同じ年に2本の
監督作品の公開となる。しかも1カ月差というのは、10月と
12月の公開だった2006年よりさらに短期間になるものだ。

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04月01日(火)
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