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On the Production
by 井口健二
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■MONGOL、スシ王子!、アウェイ・フロム・ハー、Mr.ブルックス、休暇、最高の人生の見つけ方、1978年冬
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『MONGOL』“Mongol”
13世紀初頭にモンゴルを統一し、その後には当時の文明国家
の半分を支配したとも言われるチンギス・ハーンの若き日を
描いた作品。
『コーカサスの虜』でカンヌ映画祭批評家連盟賞を受賞した
セルゲイ・ボドロフ監督が、主演に日本人の浅野忠信を起用
して製作した作品で、今年のアカデミー賞で外国語映画賞部
門にもノミネートされた。
物語は、テムジンが9歳にして嫁を決めに行くシーンから始
まり、部族の崩壊や敵国の虜囚となるなどの苦難の時期を経
て、最後は幼い頃に血の契りを結んだ義兄弟ジャムカの軍を
破ってチンギス・ハーンとなるまでが描かれる。
物語の期間は、2006年12月に紹介した日本映画の『蒼き狼』
とほぼ一致しており、その点では比較せざるを得ないものだ
が、全体的な印象は、豪華絢爛の日本映画に比べると生活様
式などはシンプルに描かれている。
特に衣裳には、高価な贈り物として黒テンの毛皮などという
ようなものも出てはくるが、全体としては質素さを前面に描
かれている感じがした。
そして何よりこの映画で特筆すべきは、全編がモンゴル語で
描かれている点で、主演の浅野はもちろん、ジャムカ役を演
じた『初恋のきた道』などのスン・ホンレイもモンゴル語の
台詞を話しているものだ。
その実力のほどは僕らには判らないものだが、テムジンの妻
ボルテ役の女優はモンゴル人だそうで、その辺のチェックは
されているのだろう。それに、まあ大時代的な日本語の台詞
が飛び交うよりは、観ていて気持ちの良いものだ。
それにこの作品では、日本映画では描かれたテムジンとその
息子との確執などはカットされており、この点でもシンプル
に話が進められている。その点では、恐らく西欧人には目新
しいであろうアジアの1人の英雄の物語として判りやすく描
かれているものだ。
その点の善し悪しは観る人の判断になるが、リアルさという
点では間違いなく本作の方が勝っていることは言ってしまえ
るだろう。
それから浅野の演技は、日本の映画では何となくシャイな感
じの印象を持つ俳優だが、本作では凛々しく立ち回りも披露
しており、さらに妻や子供たちへの愛情の注ぎ方など、正に
適役に感じられた。
なお撮影は2005年と翌年の2期に別けて行われたそうだが、
実はちょうどその間に行われた映画の試写会で浅野を見掛け
たことがある。その時は腰近くまでの長髪で、「役作りなの
で」と物腰柔らかく話している姿が印象的だった。
僕はその当時にもこの映画のことは知っていたので、役作り
も大変だなあと思いつつ浅野の姿を見ていたが、アカデミー
賞のノミネーションを勝ち取る素晴らしい作品ができて、そ
れも報われたと言うところだろう。

『銀幕版スシ王子!〜ニューヨークへ行く〜』
先にテレビ朝日系で放送されたシリーズドラマの映画版。
自然流琉球唐手の奥義を目指し、日本全国津々浦々で寿司の
修業に励んできた主人公が、シャリの極意を学ぶため、その
達人の店のあるニューヨークへやってくる。
オリジナル版のテレビシリーズの全部は観ていないが、主人
公の決めポーズなど、いわゆるシチュエーションコメディの
典型だと思われる。従ってこの種の作品を楽しむためには、
観客もそのシチュエーションにどっぷりと浸り込む覚悟が必
要になるもので、それができない人がとやかく言うような代
物ではない。
それでは観客が制限されると思われるかも知れないが、そこ
は人気タレントを起用したテレビシリーズが基にあることで
問題はクリアされるものだ。
しかも本作では、この銀幕版の製作はテレビシリーズの企画
当初から考えられていたとのことで、テレビシリーズに取っ
て付けたような劇場版ではなく。シチュエーションの連携も

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03月23日(日)
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