ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460297hit]

■プライスレス、スルース、ジェシー・ジェームズ…、いつか眠りにつく前に、つぐない、ぼくたちと駐在さんの700日戦争、フランチェスコ
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『プライスレス/素敵な恋の見つけ方』“Hors de prix”
オドレイ・トトゥ、ガド・エルマレ共演によるロマンティッ
ク・コメディ。
エルマレが演じるのは、リゾートホテルのしがないウエイタ
ーのジャン。ところがある日、トトゥが演じる素敵な女性客
イレーヌに目を留め、ふとした偶然から金持ちを装って一夜
を共にしてしまう。
そのイレーヌは、金持ちの独身男性を狙って、あわよくば玉
の輿に乗ろうと企む女ジゴロ(ジゴレット)。そのとき彼女
は、ある老人に取り入って近々結婚と言うところまで漕ぎ着
けていたのだが、ジャンの登場で計画が狂い始める。
ジャンの正体はすぐにばれて、イレーヌは立ち去るが、ジャ
ンには彼女のことが忘れられない。こうして、10秒1ユーロ
の高級な女性とウエイターの職も失った男との恋の攻防戦が
始まる。
トトゥは、このような一種の悪女の役柄を演じるのは初めて
だったそうだ。そして本人は、もっと若い頃にこういう役柄
に回り逢っていたら…とも話しているそうだが、今年29歳、
ジゴレットとしては少し焦り気味のイレーヌの役柄には、今
がピッタリの感じがした。
一方のエルマレは、舞台を中心に活躍している俳優のようだ
が、コメディの演技もしっかりしているし、イレーヌに振り
回されながらもちゃんと目的は達成して行くジャンのキャラ
クターは見事に演じられていた。
他に、1960年代の“Dr.Who”や“The Avengers”にも出演記
録が見られるという大ベテランのヴァーノン・ドブチェフ。
さらに、ジャック・スピエセル、マリー=クリスティーヌ・
アダムら、こちらも大ベテランたちが脇を固めている。
脚本監督は、コメディ専門のピエール・サルヴァドーリ。主
演の2人と組むのは初めてだが、しっかり自分の世界を構築
しているようだ。
何しろトトゥはジゴレットの役だから、素敵なファッション
も取っ替え引っ替えで、彼女のファンはその辺も楽しめる。
会話も洒落ているし、ロマンティック・コメディとしては上
質の作品と言えそうだ。

『スルース』“Sleuth”
1972年にローレンス・オリヴィエ、マイクル・ケインの共演
で映画化されたアンソニー・シェーファー原作の戯曲の再映
画化。
前回は、シェーファー自身の脚色により、ハリウッドの名匠
ジョセフ・L・マンキウィッツ監督によって映画化されたも
のだが、今回はノーベル賞受賞作家のハロルド・ピンターが
脚色を担当し、イギリス映画・演劇界の重鎮ケネス・ブラナ
ーが監督した。
そして配役は、前作でオリヴィエが演じた老作家役をケイン
が演じ、作家の妻の愛人役には、本作のプロデューサーも務
めるジュウド・ロウが扮している。
1972年の映画化は日本公開時に観ているが、当時はあまり理
解できなかった。ただ印象に残っているのは、部屋に5000ピ
ースぐらいはありそうな白のジグソウパズルがあって、それ
が徐々に完成して行くのだが、最後に一気にばらばらにされ
てしまうというシーンだ。
当時は僕もジグソウに填っていて、5000ピースの風景画のパ
ズルも完成していたもので、その展開に唖然とした記憶があ
る。今回はジグソウは出てこなかったが、途中で天窓のガラ
スが粉々にされるシーンには、そのオマージュかなとも思っ
てしまったものだ。
物語は、老作家と作家の妻の愛人の若い男との対決と、その
駆け引きを描いたもの。その部分は前作と同じだが、前作で
は美容師という愛人の設定が俳優になっているなど、いろい
ろな改変も加えられている。
ところが、映画の中で作家が愛人に向かって「美容師か」と
訊く台詞があり、さらに後半では作家の思い込みでほとんど
美容師だということにされてしまう。この辺のオリジナルに
対するオマージュの捧げ方も心地よいものがあった。

[5]続きを読む

12月30日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る