ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■線路と娼婦とサッカーボール、歓喜の歌、ミスター・ロンリー、アディクトの優劣感、裸の夏、カンナさん大成功です!、SS
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『線路と娼婦とサッカーボール』
               “Estrellas de La Linea”
グアテマラの首都グアテマラ・シティのリネア(線路)と呼
ばれる貧民街に暮らす娼婦たちが、暴力や差別に苦しむ自分
たちの境遇をアピールするために結成したサッカーチームの
顛末を描いたドキュメンタリー。
バラックのような家並みの間に線路が敷設され、そこを貨物
列車が通り抜ける。こういう風景は過去にも何度か見ている
気がするが、本来なら線路に沿って進むはずの都市開発が、
どうした経緯でこんな貧民街を生み出すのか、いつも疑問に
思ってしまうところだ。
それはともかく、ここに登場する線路の沿線には娼婦たちの
仕事場が並んでいた。そこで仕事をする娼婦たちがサッカー
チームを結成、そのチームはサッカー協会にも登録されて公
式の試合に臨むのだが…
何たって娼婦が選手のチームだから、最初に試合をした女子
高校のチームの父兄からは抗議を受けるし、次の対戦相手は
警察チームだったりと、すったもんだが続いて行く。それで
もスポンサーも付いて遠征ではホテルに宿泊したり、結構夢
のような展開にもなる。
ところが、隣国エルサルバドルに同様のチームが結成され、
国際試合が申し込まれる辺りから形勢がおかしくなる。それ
で圧力も激しくなってきたのかスポンサーが撤退。それでも
彼女たちは、なけなしの物品を集めてバザーを開いて旅費を
造り出す。
そして、その試合のピッチに小さな国旗を持って入場する姿
は本当に誇らしげだ。
職業に貴賤はないと言いながら、この後、選手に逮捕者が出
たり、国外退去処分になったりで、チームはばらばらになっ
てしまったとエンディングでは語られていた。
なお作品中では、選手の娼婦が自分の境遇を語る場面や、一
番のサポーターと称する元娼婦で今は彼女たちに避妊具など
を売り歩いている片目の老女の生活ぶりなども登場して、彼
女らが訴える暴力や差別の実態も紹介される。
結局、彼女たちが起こした行動の結果がどうなったのかも良
くは判らないが、こんな世界があるのだと言うことは伝わっ
てきた。なお作品は、世界中の50カ所以上の映画祭で上映さ
れ、15以上の受賞を果たしているそうだ。

『歓喜の歌』
立川志の輔による新作落語からの映画化。
1998年に井筒和幸監督による『のど自慢』を製作して以来、
庶民と歌の関係を映画にし続けているシネカノンが、昨年の
『フラガール』に続いて、今回は年末恒例「第九」の合唱に
挑戦するママさんコーラスを描く。
物語はとある地方都市の公設ホールが舞台。そこでは毎年、
伝統のあるママさんコーラスが大晦日に発表会を開いていた
ようだ。ところが、その年の4月に私的なトラブルが原因で
左遷されてきた管理主任が、別の女性コーラスの公演をその
時間帯に入れてしまう。
しかも、その2つのコーラスの名称が似ていたことから、そ
のダブルブッキングが発覚したのは12月30日。果たして2組
は無事コンサートを開くことが出来るのか…?
この2組のママさんコーラスが、一方は由紀さおりを中心と
した奥様グループと、他方は安田成美を中心に、根岸季衣、
藤田弓子らが集う庶民派グループということで、その対比も
分かり易く、また互いに一歩も引かないという雰囲気も、見
るからという感じになる。
そして、この2つの女性グループの間で、小林薫扮する主任
と、伊藤淳史扮するその部下が右往左往させられる。
当然、合同でのコンサートも提案されるが、双方の配ったチ
ケットの枚数がホールの定員をはるかに超えているなど、難
問が次々に襲いかかる。しかも、主任の私的なトラブルがま
だ継続中だったりもして、にっちもさっちも行かなくなると
いう展開だ。

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11月30日(金)
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