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On the Production
by 井口健二
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■シルク、ボビーZ、パルス、ダーウィン・アワード、ゼロ時間の謎、フローズン・タイム、中国の植物学者の娘たち
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※
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『シルク』“Silk”
1998年の東京国際映画祭で、コンペティションに出品された
『レッド・バイオリン』のフランソワ・ジラール監督による
同作以来の新作。本作は今年の映画祭のクロージング作品と
しても上映された。
前作は、イタリアで制作された1丁のバイオリンが、数奇な
運命によってヨーロッパからアジア、そしてアメリカまで旅
する物語が、5つのロケ地、5つの言語でオムニバス風に描
かれ、東京国際映画祭では芸術貢献賞を受賞の他、翌年度の
アカデミー賞の音楽賞にも輝いた。
そのジラール監督の新作は、アレッサンドロ・バリッコの原
作に基づき、1人の絹商人が最高の絹を求めてヨーロッパか
ら日本まで旅する話が描かれる。
背景は19世紀。当時のヨーロッパでは蚕に疫病が発生し、中
東までの蚕が全滅している。そんな状況下で健全な蚕の卵を
求めての旅となるものだが、一回の旅で数万個の卵を持ち帰
れば、巨万の富が得られるという実益も兼ねた冒険の旅だ。
しかし、時代は幕末、日本はまだ鎖国中で、異人と判れば死
罪となる。そんな危険を冒した旅が描かれる。しかも、祖国
に妻を残して旅する主人公は、日本でも1人の女性に心を魅
かれ、それが彼の人生を狂わせて行く。
壮大なスケールの物語が、丁寧な情景描写の中で描かれる。
特に蚕の産卵に合わせて日本で過ごす期間は冬となるが、そ
の雪に包まれた山間の風景は、日本ロケでしか描けない見事
な自然が写し出されている。
そして日本側の登場人物として、役所広司、國村隼らが主に
は日本語の台詞で丁寧な演技を見せてくれる。
ただし、主人公を演じるマイクル・ピット、その妻役のキー
ラ・ナイトレイ、絹商人の元締め役のアルフレッド・モリー
ナらは、設定はフランス人のはずだが、台詞は全部英語。
これは、前回映画祭のQ&Aで言語への拘わりを開陳してい
た監督にしてはちょっと残念だったが、でもまあ、映画の興
行を考えるとこれも仕方のないところなのだろう。ナイトレ
イの妻役はそれだけの価値があるということだ。
日本人の俳優では、他に中谷美紀と新星・芦名星、それに、
『HINOKIO』の本郷秦多らが重要な役柄で登場する。
また音楽は坂本龍一が担当し、ヴァイオリン演奏には『レッ
ド・バイオリン』の演奏を担当したジョシュア・ベルが参加
していた。
『ボビーZ』“The Death and Life of Bobby Z”
実在するのかしないのか、西海岸の麻薬組織を牛耳るとされ
るボビーZ。そんな都市伝説のような人物を、ジャーナリス
トから私立探偵、密輸業者など様々なちょっとヤバイ仕事に
も就いてきた作家ドン・ウィンズロが描いた小説の映画化。
原作は、角川文庫から翻訳も出ているようだが、ウィンズロ
ウが西海岸のバーやクラブで聞いた噂話を纏めたというのが
執筆の経緯になっているようだ。
この原作から1997年の『トゥ・デイズ』などで評価されてい
るジョン・ハーツフェルドが監督、ヴィン・ディーゼルをブ
レイクさせた『ワイルド・スピード』では本来主役だったポ
ール・ウォーカーの主演で映画化した作品。
物語は、小さな罪2つで刑務所に入り、そこでいちゃもんを
付けてきた暴走族のリーダーを返り討ちにして3度目の罪と
なり、もはや逃げ場のなくなった男カーニーが主人公。この
ウォーカー扮する主人公の顔付きが、実はボビーZに似てい
たことから始まる。
それに眼を付けた連邦麻薬捜査局DEAの捜査官が、実はタ
イで死去したボビーZの身代りになって捜査に協力すれば、
その後は無罪放免にしてやると提案。その捜査協力とは、ボ
ビーZとは面識がないはずのメキシコの麻薬王とコンタクト
するというのだが…
案の定作戦は失敗。しかもカーニーはメキシコの麻薬王から
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11月10日(土)
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