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On the Production
by 井口健二
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■再会の街で、鳳凰、黒い家、エンジェル、ザ・シンプソンズ、その名にちなんで、SAW4
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※今回このページでは、東京国際映画祭の特別招待作品と※
※コンペティション作品で日本での公開が迫っているもの※
※及び試写で見せてもらった映画の中から、僕が観て気に※
※入った作品のみを紹介しています。 ※
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<コンペティション作品>
『再会の街で』“Reign Over Me”
アダム・サンドラー、ドン・チードルの共演で、9/11の被
害者を描いた作品。
チードル演じる主人公は、ニューヨークで歯科クリニックを
開業している。しかも患者は引きも切らず繁盛しているよう
だ。ところが、彼が創設したはずのクリニックは、雇い入れ
た他の医者たちの思うが儘になっており、彼は裁量権も奪わ
れている。
そんな彼だったが、表面的には家族と共に安寧な生活を送っ
ていた。その彼が街角で大学時代の同級生の姿を見掛ける。
サンドラー扮するその同級生は9/11で家族を失い。政府の
見舞い金などで暮らしに不自由はなかったが、世間とは隔絶
した生活を送っていた。
そんな彼を励まそうとした歯科医も、最初は拒絶されるのだ
が…。やがて同級生の方から彼に誘いが掛る。そこで歯科医
が見たのは、1970年代の彼らの学生時代を再現したような同
級生の生活態度だった。
正直に言って、いつまで経っても9/11を引き摺っているハ
リウッド映画にはいい加減にしろと言いたくなっている。確
かにテレビで生中継されたあの衝撃は大きかったが、自分の
国がしてきたことを棚に上げて、これ見よがしに被害者面さ
れるのも呆れてしまうものだ。
そんな気持ちで、多少覚めた眼で見た映画だったが、テーマ
をどこに置くかは別にして、人生の辛苦からの立ち直りを描
くこの映画は、確かに優れた作品だった。特に終盤の同級生
が家族に対する想いを語るシーンは、その故が何であれ等し
く理解できるものだ。
一方、歯科医の抱える問題に関しては、勤務先の問題にして
も夫婦仲の問題にしても、自分たちとあまり変わりないとも
思えるもので、それはそれで理解できるというか、いろいろ
考えさせられるものもあった。
その意味では、普遍的に考えさせられる作品であったことは
確かだ。ただあまりに前面に9/11が出てくるのは、アメリ
カ人以外としては一言言いたくなってしまうのだが。
なお、家族への想いを語るシーンで愛犬のことに触れられた
のには、ある程度の予想はしていたが、犬を飼っている者と
しては思わず涙腺に来た。本来なら爆笑のシーンかも知れな
いが、これはしてやられたという感じだった。
<コンペティション作品>
『鳳凰〜わが愛』“鳳凰”
第2次大戦前後の中国東北部を舞台に、それぞれ罪を犯した
男女が刑務所で出会い、時代に翻弄されながらもその純愛を
全うする物語。中井貴一が中国人の役柄での主人公を演じる
と共に、プロデューサーとしても参加した日中合作映画。
主人公は、婚約者に悪戯した男に暴力を振るって15年の刑罰
を受ける。しかも刑務所でも反抗的な主人公は懲罰を受け、
そこで暴力的な夫を殺害した罪で投獄された女性と出会う。
そして互いに生きる望みも失った2人は、徐々に心を引かれ
合って行くが…
最初は封建的な中国、やがて日本軍の進駐から満州国設立、
そして国民政府の支配から中国共産党へと、目まぐるしく変
化する時代の中で、恐らくは民衆もそうだったのだろうが、
それ以上に過酷な運命に晒される男女の物語が綴られる。
しかも映画は、撮影時期の関係もあるのだろうが、ほとんど
が雪景色のシーンで、それも大粒の雪や吹雪が容赦なく襲う
シーンも描かれている。それらがすべて本物であることは見
ていれば判るもので、その過酷さは見事に表現されていたと
言えそうだ。
またその間には、たぶんCGIも使用されていると思われる
幻想的なシーンも挿入され、それが過酷な中での一瞬の和み
にもなっていて観客を落ち着かせてくれる。その描き方や構
成も良い感じだった。
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10月31日(水)
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