ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■レディ・チャタレー、レンブラントの夜警、バイオハザードV、迷子の警察音楽隊、カルラのリスト、アヴリルの恋
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『レディ・チャタレー』“Lady Chatterley”
D・H・ロレンス原作『チャタレー夫人の恋人』の映画化。
日本では発禁処分になったり、猥褻論争で有名な原作だが、
今回の映画化は一般に流布されている第3稿ではなく、第2
稿に基づくとされている。ただし、この第2稿は第3稿以上
に描写は鮮烈なようで、映画化はその描写を最高の美しさで
映像化しているものだ。
主人公コンスタンス・チャタレーの夫クリフォードは、第1
次大戦に従軍中の負傷で下半身が麻痺している。従って夫婦
の営みは果たせない夫だったが、炭坑を経営する資産家であ
り、コンスタンスの生活にも不自由はない。
そんな夫婦の暮らす館は深い森に包まれ、その森には猟番の
男パーキン(名前は各稿ごとに違うそうだ)が小屋を建てて
暮らしていた。そしてある日、夫の指示を伝えにその小屋に
向かったコンスタンスは、パーキンが上半身裸で体を拭う姿
を目撃し…
実は、第3稿というのはロレンスが論争になることを予想し
て書いたと言われ、その論争に対処するために、かなり理論
武装に力が入れられているのだそうだ。
それに比べると第2稿は、コンスタンスと猟番の関係に焦点
が絞られ、純粋な愛の姿が描かれている。従って映画化もそ
の視点で描かれているもので、この方が映画化には向いてい
る感じもするところだ。
そして今回の映画化では、自然描写を多用して飛び切り美し
く2人の関係を描いており、その映像にも心を魅かれた。監
督は、本作が長編3作目で、しかも前作からは11年ぶりとい
う女流のパスカル・フェラン。
出演は、2人とも主演は初めてでほとんど新人というマリナ
・ハンズとジャン=ルイ・クロック。この2人の関係が徐々
にエスカレートしていき、最後は全裸で森を走り回るなど、
奔放な姿を大胆に、そして体当たりで演じている。
なお本作は、2006年のフランス・セザール賞で9部門にノミ
ネートされ、作品、主演女優、脚色、撮影、衣装美術の5部
門で受賞している。
それにしても、発禁処分になるほどの描写の過激さで有名な
作品ということで、結末も相当に厳しいものになるのではな
いかと覚悟していたが、こんなにも見事にハッピーエンドな
作品とは思っていなかった。
勿論、不道徳な物語ではあるし、夫人は結局、夫を裏切って
いることは確かだが、彼女の行為自体は当時の貴族社会では
認められていたことであり、その道徳の範疇にある。そう考
えるとこの作品は、美しい映像に彩られた純粋な愛の物語と
言える。それが明瞭に描き出された作品だ。

『レンブラントの夜警』“Nightwatching”
オランダ絵画の巨匠レンブラントの代表作『夜警』に隠され
た謎を追ったイギリス人監督ピーター・グリーナウェイの作
品。
画家というのは、生前は悲惨な生涯を送り、死後評価された
人は多いが、レンブラントの場合は30代で肖像画家として成
功を納め、マネージャーでもあった妻や弟子たちと共に大き
な屋敷に住み、自作を出版するための印刷所まで自前で持っ
ていたということだ。
ところが、ある時を境に彼の人生は暗転し、財産を失い破産
にまで追い込まれる。その原因は、妻の死などの影響も語ら
れるが、ちょうどその頃に描いた『夜警』にその秘密が隠さ
れている…と言うのが、本作の脚本監督を務めたグリーナウ
ェイの主張だ。
その絵は、アムステルダムの自警団の団員を描いた集団肖像
画だが、その絵を描くために自警団に接近したレンブラント
は、その実体を目の当りにする。そこには権力に溺れた男た
ちと共に、陰謀や不正や暴力や歪んだ欲望が渦巻いていたの
だ。
しかも、事故死に見せ掛けた殺人事件まで発生し、レンブラ
ントは絵筆で彼らを告発することを決意するが…

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09月30日(日)
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