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On the Production
by 井口健二
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■第142回
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※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
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 まずは、ちょっと気になったこの話題から。
 ハリウッドを舞台に規格の覇権争いが続いているBlu-ray
とHD-DVDについて、突然パラマウントとドリームワークス・
アニメーションから、HD-DVDを単独採用するという発表が行
われた。
 実はこの争いに関しては、すでにアメリカ最大手ヴィデオ
ショップのブロックバスターがHD-DVDの扱いを止めたり、大
手量販店チェーンが、店頭でのプレーヤー販売はBlu-rayに
限定して、HD-DVDプレーヤーはカタログ及びネット販売のみ
とするなど、コンシューマーサイドでは、事実上Blu-rayの
勝利が確定していたはずだったのだ。従ってその状況下での
今回の発表は、極めて不自然な印象を受けた。
 そしてこの発表に対しては、マイクル・ベイ監督が、いち
早くブログで、「彼らは、僕に“Transformers 2”を作らせ
たくないのか」という声明を発表するなど、波紋を広げるこ
とになった。因にベイ監督は、過去のヒット作の『バッド・
ボーイズ』がソニー、『アルマゲドン』『パールハーバー』
がディズニーと、いずれもBlu-ray陣営の映画会社で、彼の
友人にもBlu-ray所有者が多いという状況があったようだ。
 さらに、ドリームワークスの創設者スティーヴン・スピル
バーグの側近からも、「スティーヴンは、基本的にBlu-ray
のサポーター。最近手掛けた『未知との遭遇』のBlu-ray版
の出来にも満足している」という発言が飛び出すなど、内部
の混乱の様子も伝わってきたものだ。
 それなら何故、今の時期にパラマウントとドリームワーク
ス・アニメーションがこのような発表に踏み切ったかという
ことになる訳だが、ここで最初に思いつくのはカツェンバー
グとディズニーの確執。ディズニーが採用するのと同じ規格
には乗りたくないというのはありそうな話だ。しかし、話は
そんな単純なものではなかったようだ。
 実は、Variety紙に載ったレポートによると、今回の決定
に絡んでは、HD-DVDの中心会社の東芝から、パラマウントに
5000万ドル、ドリームワークスには何と1億ドルの資金提供
が行われたということだ。この数字に関しては業界紙の記事
だからまず間違いはないと思われるところだが、さらにこの
金額は、HD-DVDを採用しているマイクロソフトのXbox向けに
『シュレック3』がHD-DVD単独で出るだけでも、充分な効果
があるということで、経済的にも頷ける数字のようだ。
 そしてこの金額は、ドリームワークスの現状からすると断
れないものだったという論評も掲載されていた。
 つまり今回の両社の動きは、お金が絡んでのものというこ
とになりそうだが、実際は収録時間などの仕様の面でもBlu-
rayの方が映画の収録には適しているという意見もあって、
ハリウッドも個人のレベルでは、Blu-ray採用でほぼ意見も
揃ってきているようにも見える。それを両社にユニヴァーサ
ルを加えた3社が企業の論理で覆すことができるか、規格の
覇権争いは大詰めに来ているようだ。
 なおベイ監督に関しては、ブログが話題になるや否やパラ
マウントの担当者がHD-DVD持参で飛んできたそうで、それで
見せられたHD-DVD版『300』の映像には満足したそうだ。
このため前言は取り消して“Transformers 2”は作りたいと
いう声明も出しているが、問題はそこにあるのではないとも
思えるところだ。
        *         *
 続いては、Blu-ray陣営ソニー・ピクチャーズの話題で、
同社の東京オフィスが築地から虎ノ門に移転し、その試写室
に最新鋭の4Kプロジェクターが設置された。その内覧会を
観てきたので報告しておこう。
 4Kプロジェクターというのは、ハリウッドが標準化した

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09月01日(土)
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