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On the Production
by 井口健二
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■サッド ヴァケイション、アフター・ウェディング、レター、ジャンゴ、北京の恋、カタコンベ、ナンバー23
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『サッド ヴァケイション』
2000年の『EUREKA』でカンヌ映画祭国際批評家連盟賞
を受賞。同作のノヴェライズで第14回三島由紀夫賞を受賞し
た青山真治監督の新作。
デビュー作の『Helpless』、『EUREKA』に続いて、監
督の出身地である北九州を舞台にした3部作の完結篇という
位置づけの作品のようだ。と言っても、僕は前の2作は観て
いないのだが、物語は本作だけでも成立しているもので鑑賞
には全く問題はなかった。
そして本作では、観終えてちょっと意外な展開に感心もさせ
られた。
物語の主人公は、浅野忠信が演じる代行運転手の男。彼はあ
る事情を抱える知的障害者の少女と、中国人の少年と共に暮
らしている。
そんなある日、彼は送り届けた運送会社の社長の家で、幼い
頃に別れた母親を目撃する。母親の家出後、父親も亡くした
彼は、母親を見付けたら殺すと誓ってきたが、面と向かった
彼女の前では何もできない。そして母親は、彼に一緒に暮ら
すことを求める。
その運送会社には、免許を剥奪された元医師や、借金取りに
追われてびくびくと暮らしている男や、その他にもすねに傷
を持つ連中が集まって暮らしていた。そんな怪しげな連中を
社長は何も聞かずに保護していた。そしていろいろな事件が
起きるのだが…
この母親を石田えりが演じ、社長を中村嘉葎雄、従業員を宮
崎あおい、オダギリジョー、川津祐介、島田久作らが演じて
いる。その他、光石研、とよた真帆らが共演。
因に、浅野の役柄は『Helpless』と同じ人物、宮崎も『EU
REKA』と同じ人物で、光石や他にも前作に登場している
人物はいるようだ。でも本作での彼らの登場は自然で、前作
との絡みが問題になるような部分はほとんどなかった。
主人公は浅野が演じる男性だが、描かれているのは実は彼を
取り巻く女たちの物語のようにも観える。特に、母親像が鮮
烈に描かれている。その母親は観音様のような慈愛の笑みを
浮かべて、掌の上の男たちを操っている。そんなイメージが
湧いてくる作品だ。
男としては、こんな母親の前では手も脚もでないのだろう。
そんな女性の底深いしたたかさが描かれた作品。これはもし
かしたら、男にとっては最恐のホラー映画かも知れない。
なお本作は、8月末開催のヴェネチア映画祭で、<オリゾン
ティ部門>のオープニング作品として上映される。

『アフター・ウェディング』“Efter Brylluppet”
今年のアカデミー賞外国語映画部門にノミネートされたデン
マークのスサンネ・ビア監督作品。
内容に関しては全く予備知識なしに観ていて、何とも不思議
な感覚の作品だった。
物語の発端はインド。孤児を集めて学校を開いているヨーロ
ッパ人の男性が、資金援助を申し出たデンマークの資産家に
呼び出されるところから始まる。その学校には、特に彼が目
を掛けている少年がいて、彼は少年の誕生日までには戻ると
言い置いて出発するが…
そして訪れたデンマークでは、資産家の娘の結婚式に招待さ
れ、嫌とは言えない彼は招待を受ける。しかしそこには重大
な事態が待ち受けていた。
メロドラマということなのだろうが、かなり強引な展開で、
観客も主人公と同じくらいに翻弄される。しかし、こんな強
引な話なのに嫌みが無く、主人公に同化して事態の先行きに
悩まされるというのには、脚本の巧みさと言うか映画づくり
の上手さを感じた。
結局、主人公は資産家の思う壺に填ってしまう訳だが、それ
も資産家の描き方に嫌みが無いから、そのやり口にも納得さ
せられてしまうというところだ。
デンマークの俳優人には馴染みが少ないが、主演は、2004年
のジェリー・ブラッカイマー作品『キング・アーサー』にも
出演してたマッツ・ミケルセン。資産家役は、『マルティン

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08月31日(金)
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