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On the Production
by 井口健二
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■自虐の詩、ロケットマン、ローグ・アサシン、4分間のピアニスト、クワイエットルームにようこそ、さらばベルリン、幸せのレシピ、シッコ
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『自虐の詩』
1985〜90年に週間宝石で連載された業田良家原作の4コマ漫
画を、中谷美紀と『ケイゾク』、阿部寛とは『トリック』を
手掛けた堤幸彦監督が、その2人の共演で映画化した作品。
田舎では、幼い頃に母親が家出、父親も銀行強盗で刑務所送
り。そんな女が都会に出ても、結局寄り添う相手は元やくざ
で定職もなく、何かというと暴力を振るって警察沙汰になる
ような男。それでも女は、最悪の時期を救ってくれた男から
離れることができない。
そんな社会の最底辺で生きる男女を軸に、人生の機微をユー
モラスに描いた作品。
男は、気に触ることがあると卓袱台をひっくり返す。「巨人
の星」でも有名なこのシーンが、多分4、5回はあったと思
うが、本作では実写で見せてくれる。ご飯や味噌汁、湯飲み
のお茶などが見事に吹っ飛ぶものだ。
本作はHDで撮影されたもののようだが、ということは、こ
のシーンの撮影はスーパースローで行われたのだろう。見事
なスローモーションに、さらにCGIも合成して、かなり見
栄えの良いシーンが展開されていた。
CGIはこの他にも、幻想的なアニメーションから、最後は
超低空で飛ぶジェット旅客機まで要所要所にさりげなく、う
まく使われていて、そのセンスも良い感じだった。
まあそれだけ観ていても面白い作品だが、さらにストーリー
では、何でこんな男について行くのだろうという女の性が、
丁寧に描かれていて、最後はほろりとさせられる見事な展開
になっていた。もちろん御都合主義もいろいろあるが、所詮
はこんなものだ。
自分の信条としては、小市民の小さな幸せというのは、バブ
ル崩壊後の日本政府が国民に押しつけた最悪の理想像だと考
えているが、現実にそこから脱出したくてもできない人々が
大半なのだから、ここまで極端ではないにしても共感を呼ぶ
ところは多い物語だ。
共演は、遠藤憲一、カルーセル麻紀、松尾スズキ、竜雷太、
名取裕子、西田敏行。他に、ミスターちん、Mr.オクレ、斉
木しげるなど。また、主人公とその親友の中学生時代を演じ
た岡珠希と丸岡知恵の子役2人がなかなか良かった。

『ロケットマン』(タイ映画)
タイ米の輸出品としての価値が高まり、その増産を助けるた
めに必要な場所への農耕用牛の移動が行われている。一方、
農業の近代化のためトラクターの導入も始まっている。そん
な1920年代のタイ農村部を舞台にしたアクション映画。
ナイホイと呼ばれる牛飼いたちが盗賊団に襲われる事件が頻
発し、主人公の両親も盗賊団に殺害される。そして傷を負い
ながらも寺に匿われて生き延びた主人公は、寺の許可の許、
復讐に立ち上がる。その仇は胸に紋章を彫られた男だった。
そして主人公は、タイ古来の豊穣の祭りに打ち上げられる竹
筒ロケットの技術を習得し、ロケットマンとして盗賊団の征
伐に乗り出す。ところが、盗賊団の中に胸に紋章の彫られた
妖術師が現れ、その術を破ることができない。
そこで主人公は、別の呪われた妖術師の許を訪ね、妖術を破
る方法を教えられるが…
これに、妖術師の娘やトラクターの輸入業者らも絡むから、
話は結構複雑だ。しかも、これがちゃんと整理されていない
から、なぜそうなるのか今いちピンと来ないところもある。
タイ映画の脚本の弱さについては、2005年11月頃に紹介した
『バトル7』でも指摘したが、実は本作の監督は、その同じ
人でこれは仕方がなかった。結局、脚本の弱さをアクション
の面白さで誤魔化してしまおうという魂胆のようだ。
そこで本作では、アクション監督に『マッハ!』『トム・ヤ
ム・クン』などのパンナー・リットグライがタッグを組んだ
もので、さらにVFXも絡めたアクションはなかなかの観も
のになっている。なお、リットグライは妖術師役で10数年ぶ

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08月20日(月)
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