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On the Production
by 井口健二
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■卒業写真、ラッキー・ユー、恋愛マニュアル、デス・オブ・ア・ダイナスティ、陸に上がった軍艦、サイドカーに犬、オフサイド・ガールズ
『Watch with Me〜卒業写真〜』
報道写真家だった男性が病で余命半年と宣告され、妻に付き
添われて故郷で終末医療を行う病院(ホスピス)に転院して
くる。その病室には同窓生などの見舞客が次々に訪れる。そ
こで彼は、町の人々を撮影して最後の写真集を作ろうと考え
る。そして妻の協力のもと撮影は続けられるが…そこには彼
の青春の思い出が潜んでいた。
題名は聖書のマタイ伝の言葉で、近代ホスピスの理念を表わ
してるものだそうだ。実は事前に、そんな言葉を題名にした
終末医療の映画と聞いていたので、もっと高邁な話かと想像
していたのだが、映画はちょっとした青春ドラマを織り込ん
で、夫が死に直面している夫婦の、最後の葛藤を描いたヒュ
ーマンな作品だった。
時間の流れを前後させて、その中に謎を潜ませるという構成
は、最近の流行りのスタイルのようにも見えるが、その中で
は比較的成功している作品のようにも思えた。
そして結局は、病人の夫には、本人にその考えがなくても甘
えがあるのだろうし、その甘えに対して妻がどう向き合って
行くか、そんな夫婦の姿があまり感傷的にならずに、程よく
描かれていた。
まあ、この夫婦には子供がいないという設定だから、その部
分で話は重くならずに済んでいるし、観客にとっては落ち着
いて観られる話に仕上がっている。ただしその分、終末医療
の扱いは多少軽くなってしまったかなという感じはしたが、
元々監督が描こうとしたのは夫婦の問題であって、そこでは
なかったようだ。
それに物語では、実は妻の側にも多少の秘密があって、また
彼女は地元の人間ではないという立場もあり、その妻の立場
が微妙に退いた目線でドラマを描くことにもなっている。こ
の状況は実際に起こり得るものだし、その辺りの描き方にも
共感が持てた。
出演は、津田寛治、羽田美智子。他に秋本奈緒美、根岸季衣
らが共演。また、思い出のシーンで中野大地と高木古都とい
う新人が出演しているが、中学生という設定は多少きついも
のの、それぞれ良い感じだった。
実は、この高木の演じる役柄もよそ者という設定で、その設
定が羽田の演じる妻の設定と重なるのもうまい構成に感じら
れ、全体的に納得に行く作品だった。
『ラッキー・ユー』“Lucky You”
ドリュー・バリモアとエリック・バナ共演で、『L.A.コン
フィデンシャル』のカーティス・ハンソン監督が、2003年に
ラスヴェガスで開催されたポーカー・ワールドシリーズに賭
けるギャンブラーたちを描いた作品。
主人公は、多少強引な勝負を続けるポーカープレイヤー。そ
の勝負の仕方は、時に大金も稼ぐが、一瞬で手持ち資金が0
になることも多い。そんな男が、クラブ歌手を夢見てやって
きた女と巡り会う。
彼女は、何度恋をしても最後は自分が傷ついて終わるような
女性。しかし今度の恋には違うものを感じていた。そして、
周囲からは女癖の悪いと忠告されるギャンブラーに付いて行
くことになる。
折しもラスヴェガスでは、ポーカー・ワールドシリーズの開
催が近づいており、1万ドルの参加費を集めるためポーカー
プレイヤーたちの動きも激しくなって行く。そしてそこに、
主人公にポーカーを教えた父親で、今は南フランスで優雅に
暮らしていた伝説のプレイヤーが帰ってくる。その父親と主
人公の間には確執もあった。
ポーカー・ワールドシリーズは、個人競技では最高額の賞金
が贈られるということでも関心が高いようだが、特に2003年
の大会は、テレビ中継用に初めて手札カメラが導入されるな
ど、爆発的にポーカーファンが増加する切っ掛けとなった大
会だそうだ。
その大会を背景に、人を疑うことと騙すことが本性のギャン
ブラーの男と、いくら騙されても真心で一途に男を思い続け
る女の巡り会いが描かれる。
といってもハンソン監督は、やはり男性映画の監督という感
じで、次々にいろんな局面で登場する勝負のシーンの描き方
が見事に感じられた。中でもロバート・デュヴォールが演じ
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05月31日(木)
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