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On the Production
by 井口健二
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■ショートバス、選挙、ジーニアス・パーティ、監督・ばんざい!、イラク−狼の谷−、怪談、ベクシル−2077日本鎖国−
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※
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『ショートバス』“Shortbus”
2001年12月に紹介した『ヘドウィグ・アンド・アグリーイン
チ』のジョン・キャメロン・ミッチェル監督の第2作。前作
もかなり衝撃の作品だったが、本作も描かれる映像はかなり
衝撃的なものだ。
舞台はニューヨーク。この町で暮らす若者たちの姿が描かれ
る。若者といっても子供ではない。すでに分別もある年代の
者たちが、人生に迷い、今の自分がこれで良いのかと悩む姿
が描かれる。
主人公となるのは、まず1人は、カップルの恋愛コンサルタ
ントをしている東洋系の女性。彼女は芸術家の夫を愛し、セ
ックスにも満足はしているが、実は彼女自身がオーガズムに
達したことがない。
そして、ゲイのカップルが彼女に相談に訪れ、思わず悩みを
口にしてしまった彼女は、彼らに誘われるまま、「ショート
バス」という名のクラブを訪れることになる。そこは男女が
思うが儘のセックスを楽しめる場所。そこで彼女は、自分探
し旅を行うことになる。
一方、ゲイのカップルも、自分たちの関係を見失いそうにな
っている。そしてそこに、彼らに憧れる若者や彼らにストー
カー行為をしている男。さらに初老のゲイや、SMの女王な
ども絡んで物語が展開して行く。
何しろ物語の展開がセックスに絡むものばかりだから、映像
もそういうシーンが次々に登場する。このため画面は暈の連
続なのだが、暈も昔に比べれば画質の劣化も少ないから、そ
れほど気になることはなかった。
でもまあ、普通に見れば、かなり破廉恥な作品ということに
はなってしまうものだ。とは言え、そこに描かれている内容
は、純粋に現代人が抱える悩みのある一面とも言えるものだ
し、その意味では、これは正しく現代を象徴する作品になっ
ているとも言える。
なお巻頭に、自由の女神に始まるニューヨーク・シティの巨
大なジオラマが登場する。このジオラマはその後も何度か登
場するが、何しろ素晴らしいものだし、その撮影テクニック
がまた見事だった。
ところがプレス資料によると、これがCGIなのだそうだ。
正直俄には信じられない気持ちだが、『ヘドウィック…』で
もアニメーションを提供したジョン・ベアの作品とのこと。
『ニューヨーク1997』のCGIシーンが、実は模型で模
擬したものだったことを知る者には、正に隔世の感という思
いだった。
『選挙』“Campaign”
主にNHKで作品を発表しているアメリカ在住のドキュメン
タリー監督・想田和弘による日本の地方選挙の内幕を描いた
作品。2006年10月に行われた川崎市議補欠選挙に立候補した
自民党公認候補の奮闘ぶりを描く。
主人公となるのは山内和彦という1965年生まれ、東大卒で自
営業、と言っても趣味が高じた切手コイン商という人物が、
自民党の候補者公募に応募し、東京の人なのに自民党公認の
落下傘候補で川崎市議補選に出ることになる。
地盤、看板が重要と言われる地方選挙で、彼には当然地盤は
ないのだが、補欠選挙の特性として、政党の公認(看板)が
あれば現職議員たちが応援をしてくれる。そんな訳で、それ
こそ小姑のような地元各議員の後援会の人たちの指導の下、
選挙戦が開始される。
そこでは、ビラの配り方から握手や名前の連呼の仕方、さら
に電柱にもお辞儀しろという理不尽にも思えるアドバイスま
で、実に馬鹿馬鹿しい発言が飛び出してくる。それらを、監
督兼カメラマンの想田が、まさに密着して観察し続ける。
作品は、<観察映画シリーズ>の第1作と称されているもの
だが、それはまさに観察に徹したもので、作品には説明的な
ナレーションも音楽も一切なく、被写体だけが映り続ける。
ところがこれが、見ていて笑いが出るほど滑稽なのだ。
作品は今年のベルリン映画祭に出品され、そこでル・モンド
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05月10日(木)
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