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On the Production
by 井口健二
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■デブノーの森、エマニュエルの贈りもの、コマンダンテ、電脳コイル、初雪の恋、テレビばかり見てると馬鹿になる、スパイダーマン3
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※
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『そして、デブノーの森へ』“le Plix du Desir”
邦題にあるデブノーの森というのは、ポーランドでユダヤ人
墓地のある場所のようだ。
また、映画の最初の方には、2人の火星人がアメリカで出会
って、お互いを4桁の数字で呼びあった後に、「俺たちユダ
ヤ人には見えないよな」と言うジョークも紹介される。ここ
で言われる4桁の数字は、アウシュヴィッツを連想させる。
このように作品の背景には、特にポーランドにおけるユダヤ
人の問題が色濃く存在しているようだ。しかし僕には、その
問題を正確に伝えられるだけの知識の持合せがない。まず、
そのことをお詫びしてから、映画の紹介をさせてもらう。
物語は、すでに何作もの世界的なベストセラーを発表しなが
ら、その素性を明かさない作家を主人公にしている。ここで
観客にはその素性が判っているものだ。
その作家が、出先から義理の息子の結婚式に向かうために乗
船したフェリーで若い女性と出会う。そして作家は、結婚式
には翌朝向かうと連絡し、その女性に誘われるままベッドを
共にしてしまう。ところが翌日訪れた結婚式で、彼女が花嫁
だったことを知る。
この事態に戸惑う作家だったが、彼女は初対面のように振舞
い、それどころか再び彼を誘惑し始める。しかし、彼女の行
為には、隠されたもっと大きな理由があった。そしてその先
は、彼の作家生命を奪いかねない事態へと発展して行く。
物語は、表面的に見ればファム・ファタール物なのだが、そ
こには、ポーランドにおけるユダヤ人の事情が深く関ってい
るようにも思われる。しかし、その深い部分を僕は伺い知る
こともできない。
ポーランドは元々がユダヤ人の多く住む土地で、アウシュヴ
ィッツに象徴される戦時中のナチスによる迫害に加えて、戦
後の社会主義の下でも多くの弾圧があったとされる。そのこ
とが物語の背景にあることは確かなのだが、その先が僕には
不明なのだ。それがもどかしくも感じられる作品だった。
作家を演じるのは『あるいは裏切りという名の犬』などのダ
ニエル・オートゥイユ。彼を誘惑する女性を『Novo』の
アナ・ムグラリス。他に、グレタ・スカッキ、ミシェル・ロ
ンズデール、マグダレナ・ミェルツァシュらが共演。
なお映画の中で、若い女性2人の会話の語尾に「チンクエ」
という発音が繰り返し出てくるのが気になった。実は、前回
紹介した『ボラット』でも、主人公が同じ発音を連発してい
た。ポーランド語らしいが、片やユダヤ人の女性、片や反ユ
ダヤの男性が同じ言葉を使っているのにも興味を引かれた。
『エマニュエルの贈りもの』“Emmanuel's Gift”
ガーナで、義足のトライアスリートとして国民的な英雄にも
なっているエマニュエル・オフォス・エボアの活動を記録し
たドキュメンタリー。
ガーナという国は、2000万人の国民の内1割に当る200万人
が身体障害者なのだそうだ。その原因は、赤道直下の自然条
件もあるのだろうが、その他に映画の中では、公害汚染や劣
悪な住環境、さらにポリオやハシカに対する予防対策の遅れ
なども指摘されていた。
しかも、国民の間では伝統的に障害は呪いのためとする考え
方が根強く、そのため今までは身体障害者に対する支援は全
くと言っていいほどされていなかった。従って職に就けない
彼らは、町で物乞いをして生計を立てるしかなかったという
ことだ。
そんな中で、エマニュエルは右下肢が歪んで役に立たないと
いう障害を持って生まれた。しかも父親は、そんな家族をお
いて家を出てしまう。しかしそんな境遇でも母親は彼を学校
に行かせる。実際はその学業も、差別や家庭の事情で挫折し
てしまうのだが…
そんなエマニュエルは、ある日、アメリカの障害者支援団体
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04月20日(金)
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