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On the Production
by 井口健二
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■ドリーム・クルーズ、ABonG、不完全なふたり、プレステージ、ストリングス、ハリウッドランド、Academy
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『ドリーム・クルーズ』“Dream Cruise”
2005年に、ロジャー・コーマン、ジョージ・A・ロメロ、ト
ビー・フーパーらが顔を揃え、日本からは三池崇史監督が参
加して製作されたホラーアンソロジーMasters of Horrorの
第2弾シリーズの1篇。
今回、海外の監督の顔ぶれがどのようになっているかは知ら
ないが、日本編は『リング0』や『案山子』などの鶴田法男
が担当した。なお、本作はアメリカでは1時間枠のテレビで
放送されるが、その他の国向けに約90分の劇場版が作られて
いるものだ。
原作は、鈴木光司の『仄暗い水の底から』に収載された「夢
の島クルーズ」。謎の海域に漂う小型船の中での男女の葛藤
と、そこに現れる怨念の化身を巡る物語が展開する。
主人公は、東京の法律事務所に勤務するアメリカ人弁護士。
彼はロングアイランドの出身だが、子供の頃の海に纏わるト
ラウマがあり、今でも時々その幻影に襲われている。
そんな彼の日本人のクライアントがトラブルに巻き込まれ、
その善後策を講じるための話し合いを求めるが、クライアン
トの男は彼をマリナーへと招く。そこにはクライアントの妻
も呼び出されていた。実は、弁護士とクライアントの妻とは
不倫関係にあったのだ。
そのことを知ってか知らずか、クライアントの男は2人を夜
のクルージングへ誘い出す。そしてクルーザーがとある海域
に来たとき、突然スクリューが停止する。
作品の成立上、出来るだけ英語の台詞で物語が進むことが求
められたということだが、その点でこの展開は、クライアン
トの男もその妻も弁護士との会話はほとんど英語を使うこと
になるので、うまく処理されている感じがしたものだ。
その日本人の夫婦役を、子供時代をニューヨークで過ごした
という木村佳乃と、アメリカ映画に出演経験のある石橋凌が
演じ、またアメリカ人弁護士役には『スパイダーマン2』に
メリー・ジェーンの婚約者役で出演したダニエル・ギリスが
扮している。木村佳乃には、ようやくこういう仕事が回って
きたということでは喜ばしいことだ。
それにしても、1時間枠のテレビということでは、正味は50
分以下だと思われるが、本編88分の一体どこがカットされる
のか、それにも興味が湧くところだ。

『ABonG』
20世紀初頭にフィリピンに渡った日本人の子孫たちの物語。
この日本人たちは、当時道路建設工事のために2500人ほどが
労働者として渡ったもので、過酷な工事中に500〜700人ほど
が病気や事故で亡くなったともいわれるが、工事の終了後に
は多くの人々が現地に残り、現地の女性と結婚して家庭を築
いたということだ。
そして第2次大戦前にはバギオ市周辺に日本人町も作られた
ようだが、戦時中は、進駐した日本軍にもアメリカ軍にもス
パイと疑われ、苦労をしたとされる。しかも、現在はその存
在はほとんど忘れられ、子孫には何の保障や援助もないとい
うものだ。
そんな日系人にスポットを当てた作品。監督の今泉光司は、
日本大学芸術学部卒、卒業後はCM製作や、小栗康平監督の
助監督なども務めた後、1992年にバギオを訪れ、1996年には
生活基盤もバギオ移し、そこを本拠としてこの作品を作り上
げたという。
因に、バギオは、標高1500mの高地にあり、年間平均気温が
20度前後という暮らしやすい場所で、本作の舞台となるのは
さらにそこから奥地に入ったところのようだが、村の周囲の
ジャングルには食べられる植物が自生し、その採集だけでほ
とんど生活できるそうだ。
そんな地上の楽園みたいな場所が舞台の物語だが、主人公は
そこを脱出して都会で暮らそうとし、そのため妻は日本に出
稼ぎに行こうとするが、パスポートの偽造で日本の土を踏め
ないまま送還されてしまう。そして斡旋業者からの借金が残

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03月31日(土)
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