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On the Production
by 井口健二
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■第131回
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※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
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 今回も記者会見の報告から。
 4月28日に日本公開される『バベル』のアレハンドロ・ゴ
ンサレス・イニャリトゥ監督の来日と、日本人キャスト3人
による記者会見が行われた。一般的な会見の内容は他でも報
道されると思うので、ここでは気になった話題を一つ。
 会見の中で東京での撮影について質問が出て、監督からは
「首都高速のシーンでは日曜日の早朝にスタッフの車で渋滞
を作り撮影をしたが、20分後には警察車両が来て、『撮影を
止めなさい』という注意を聞きながらの撮影だった」とか、
「渋谷街頭のシーンでは、マスクをつけて顔を隠し、学生運
動のゲリラのような格好で撮影した」などの苦労が紹介され
た。それに併せて「東京もFilm Commissionを作って、撮影
に協力して欲しい」という要望も出された。
 実際、東京での撮影には、警察などの許可がほとんど下り
ず、かなり苦労したことが試写会でのプレス資料にも報告さ
れていたものだが、実は、都庁には2004年に発足した「東京
ロケーションボックス」という部署があって、そこがそうい
う要望に応えるようになっているはずのものだ。しかし今回
は、そういう機関が利用されなかったのか、それとも利用し
ても機能しなかったということなのだろうか。
 自らの製作総指揮で映画を作るような都知事のいる日本の
首都で、海外の映画人からこういうことを言われるのは、本
当に情けない。またこれでは、去年12月に紹介した『パリ、
ジュテーム』のような作品を東京で作ることなど、夢のまた
夢なのかな、とも思ってしまう。結局、日本の文化面の施策
レヴェルの低さが露呈されたということのようだが、それが
日本の現実なのだろう。
        *         *
 さて、以下は製作ニュースを紹介しよう。
 まずは、『ディパーテッド』で待望のオスカーを受賞した
マーティン・スコセッシの次なる監督向けとして、ワーナー
が“The Invention of Hugo Cabret”という子供向けベスト
セラー小説の映画化権を獲得したことを発表した。
 この原作は、ブライアン・セルズニックという作家が執筆
したもので、物語の舞台は1930年代のパリ。鉄道駅で暮らす
12歳の孤児の少年が不思議な事件に巻き込まれるというお話
だが、そこには亡くなった父親や、ロボットも登場するとい
うことだ。そしてこの脚色を、2004年の『アビエイター』を
手掛けたジョン・ローガンが担当して、執筆は直ちに始める
としている。
 ローガンは、撮影中の“Sweeney Todd”の脚本も担当して
いるが、『グラディエーター』や『ラスト・サムライ』など
現実的な物語の中にファンタスティックな要素を感じさせて
くれるのがうまいと思える脚本家だ。しかし、『ネメシス』
や『タイムマシン』のようなもろにSFだと、却って力が入
り過ぎてしまうようで、今回のような作品ではそれがどう出
るか、期待も大きくなるところだ。
 それにしても、スコセッシ監督で子供向けベストセラー小
説の映画化というのも不思議な感じだが、ロマン・ポランス
キーも『オリバー・ツイスト』を撮ったし、それに1976年の
『タクシー・ドライバー』では、撮影時13歳のジョディ・フ
ォスターにオスカー助演賞候補をもたらしているのだから、
その面でも期待が高まる。
 ただし、スコセッシは先日パラマウントとの優先契約を結
んで、それによると彼が監督、若しくは製作する全作品の権
利の半分をパラマウントが所有することなっているようだ。
それに対して今回のワーナーの企画がどのような位置付けか
は不明だが、因に、ワーナーで以前から発表されている遠藤
周作原作による『沈黙』の計画に関しては、その契約からは
除外ということだった。

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03月15日(木)
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