ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460317hit]

■バベル、蟲師、さくらん、ママの遺したラヴソング、しゃべれども しゃべれども、主人公は僕だった、パフューム
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『バベル』“Babel”
2000年の東京国際映画祭で『アモーレス・ペロス』によりグ
ランプリと監督賞を獲得したアレハンドロ・コンザレス・イ
ニャリトウ監督が、昨年のカンヌ映画祭で監督賞に輝いた最
新作。モロッコ、メキシコ、東京で進む物語が、関わる人々
の心と心の繋がりの喪失と再生を紡ぎ出す。
物語の発端はモロッコの砂漠地帯。ジャッカルを撃つため、
羊飼いの幼い兄弟に渡されたライフルから、1発の銃弾が発
射される。
一方、カリフォルニア州の南部サンディエゴの住宅では、両
親が海外旅行中の幼い兄妹の世話を任された乳母のメキシコ
人女性が、メキシコで行われる息子の結婚式に帰るため、替
りのベビーシッターを探すがなかなか見つからない。
さらに東京では、聾の女子高生が父親と2人で住む高層マン
ションに、刑事が父親と話したいと訪ねてくる。そしてモロ
ッコでは、負傷したアメリカ人女性を乗せた観光バスが砂漠
で立ち往生している。
モロッコでは英語、フランス語とベルベル語、アラビア語、
メキシコでは英語とスペイン語、日本では手話と日本語、題
名の基となった「バベルの塔」さながらにいろいろな言語が
飛び交い、もどかしいコミュニケーションが行われる中で、
心と心の繋がりが喪失し、再生する。
3大陸を縦横無尽に行き来するこの複雑な物語の中で、実は
1本の電話やテレビ画面がその繋がり合いを紐解いて行く。
そしてその全ての繋がりの判る瞬間が、何とも言えない心を
打たれる瞬間に繋がっている。
時間の流れを複雑に入り組ませるのは、最近の映画の流行で
もあるが、それがちゃんと纏まっている作品は多くはない。
ましてや、その一瞬に全ての物語が1本の線に纏まり、そこ
に感動も生じさせるこの作品は、映画の醍醐味を感じさせて
くれるものだ。
すでに報道されているようにこの作品では、日本編の菊地凛
子と、メキシコ編のアドリアナ・バラッザがアカデミー賞の
助演女優賞候補になっている。しかし映画を見ていると、何
故この2人が主演賞候補ではないのかとも、疑問に感じてし
まうところだ。
ただしこの作品では、モロッコ編のブラッド・ピットもゴー
ルデン・グローブでは助演賞候補に挙げられていたもので、
結局、この映画の主役は物語そのものであって、俳優ではな
いという感じもしてくる。
アカデミー賞では、助演女優の他に、作品、監督、脚本、編
集、作曲賞でも候補になっているが、菊地凛子の演技ぶりに
は感動もしたし、受賞も期待したいところだ。

『蟲師』
漆原友紀原作の漫画を基に、『スチーム・ボーイ』などの大
友克洋監督が1991年『ワールド・アパートメント・ホラー』
以来、約15年ぶりに撮った実写作品。昨年のヴェネチア映画
祭でワールドプレミア上映された。
100年ほど昔の話。「蟲」とはその頃はまだ日本中にいた神
秘的な生命体のこと。それは悪霊や精霊とも違うが、時とし
て人間にとり憑き、不可思議な現象を引き起こす。そして、
そんな蟲に憑かれた人を癒すための蟲師と呼ばれる者たちも
活動していた。
主人公のギンコは、自らも蟲を呼び寄せる体質を持つ蟲師。
そのため日本中を旅して、蟲に憑かれた人々を癒してきた。
ところがある日、蟲の記録を書にして巻物に封じる能力を持
つ女性・淡幽の屋敷から急な呼び出しがあり、訪れると、淡
幽が謎の高熱を発し倒れていた。その謎を解くため書庫に入
ったギンコに、巻物に封じられた蟲たちが襲いかかる。
このギンコ役をオダギリ・ジョー、淡幽役を蒼井優が演じる
他、大森南朋、江角マキコ、りりィ、李麗仙らが共演。
物語の展開上、ほとんどのシーンは大自然を背景に描かれる
が、その背景を得るために総走行距離5万キロにおよぶロケ

[5]続きを読む

01月31日(水)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る