ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460317hit]
■東京国際映画祭2006「アジア風」+「ニッポン・シネマ・クラシック」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、東京国際映画祭で上映された「アジア※
※風」および「ニッポン・シネマ・クラシック」の作品か※
※ら紹介します。 ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
<アジアの風>
『私たちがまた恋に落ちる前に』(マレーシア)
突然妻に家出された男の前に、その妻の愛人だったと自称す
る男が現れる。そして2人は女性の過去を調べ始めるが…
監督のジェームズ・リーは、一昨年に『美しい洗濯機』とい
う作品を紹介しているが、どうもボクには感覚が掴めない。
今回も、結末で男女3人の後ろ姿は出てくるが、その意味も
はっきりしないし、そこに至る展開が唐突すぎて釈然としな
い。まあ、そこまでの展開を楽しめば良いというつもりの作
品かも知れないが、貞淑と思われた妻が不倫していたなどと
いう展開は、最近の映画では驚きもしないし…。映画の後半
で、主人公が突然日本人に間違われるシーン(しかも2人は
日本語が判るらしい?)には多少面食らったが、それも他の
話との関係はほとんど無く、一体何が言いたいのか?結局よ
く判らない作品だった。
『愛は一切に勝つ』(マレーシア)
主人公は地方出身者の女性。夜の街で出会った男が優しく彼
女に近付いてくるが、実は男には別の目的があった。
日本に置き換えてもありそうな話で、それなりに世情を描い
た作品とも言えそうだ。しかし、日本人の感覚だといまさら
と言うか、ずいぶん昔にこんな話の映画は見たような気がす
るものだ。そんな話を、現代を背景に再話する価値があるの
かと言うことになるが、もしかするとあるのかも知れないと
いう感じは持った。脚本監督編集のタン・チュイムイは女性
だから、若い女性たちに警鐘を鳴らす目的の作品と言えるの
かも知れない。ただし、それにしても本作は演出などがかな
り古典的な感じで、どうもその辺でいまさら感が出てきてし
まうような感じもするものだ。それにこの内容でこの題名は
違うように感じるが…
『鳥屋』(マレーシア)
マラッカ海峡沿岸の湊町で、古い歴史の感じさせる家屋。そ
の家の利用法を巡って兄弟が対立する。兄はそこでアンティ
ークショップを開こうとし、弟は屋根裏に燕を呼び入れて、
中国向けの燕の巣を作らせる「鳥屋」を考えている。
この鳥屋という発想は面白かったが、アンティークショップ
にしても、一攫千金を夢見ているような節があり、どちらも
詐欺商法に騙されているようなところもあって、お手軽に生
きようとする現代の若者の風俗を描いている感じもした。そ
の意味ではなかなか面白かったのだが、映画の終わりの方に
なって、突然、錫鉱山が閉鎖になったという話や、父と弟は
中国に帰ったとか、家が廃虚になっている風景が出てきて、
頭が混乱してしまった。この結末は本当に謎としか言いよう
が無く、それで結局、何が言いたいのか訳が判らなかった。
『セランピ』(インドネシア)
2004年の大津波で大きな被害を受けたアチェの街を中心に、
偶然に難を逃れた大学生、孤児の少女、人力車のドライバー
らの2年間を追ったドキュメンタリー。
大津波に襲われたときの記録映像に始まり、その後の様子が
描かれるが、いつまでたっても復興の兆しさえ見えないとい
う状況は信じられないほどだ。実際、現地に大企業がある訳
でもなく、市民だけとなると、援助の手もほとんど届かず、
これが現実ということだろう。そこに、孤児たちにイスラム
原理主義を教え込もうとする学校が描かれたりすると、かな
り危険な感じにも受け取れるが、元々がイスラム教国だから
それも仕方がない。一方で革命を望む大学生なども登場する
が、一番の市民である人力車ドライバーは、民俗舞踊に興じ
ながら自宅の再建を目指している。それが現実なのだ。
『Love Story』(シンガポール)
小説家が描く物語と、現実の世界が交錯する。作家は現実を
[5]続きを読む
01月09日(火)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る