ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■マリー・アントワネット、Life、ユメ十夜、神童、情痴、オール・ザ・キングスメン
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『マリー・アントワネット』“Marie Antoinette”
『ロスト・イン・トランスレーション』のソフィア・コッポ
ラ監督と、キルスティン・ダンストの主演で、『ベルサイユ
のバラ』でお馴染みのフランス王妃を描いた作品。
オーストリア皇女アントワーヌは、フランスとの同盟強化を
狙う母親の意向により14歳でフランス王太子に嫁ぎベルサイ
ユ宮へとやって来る。しかしそこに待ち構えていたのは、王
太子妃として万事が衆人監視の許に置かれる境遇。しかも、
15歳の夫は狩りなどの遊びに夢中で、ベッドに入っても身体
に触ろうともしない。
そんなストレスを解消するため、彼女は贅沢三昧の享楽的な
生活を繰り広げて行く。そして先王の崩御で、彼女は国王妃
となるが、その時の年齢18歳、載冠の時に夫の新国王自らが
「私たちは、統治するには若すぎます」と言ったという悲劇
が開幕する。
しかし、彼女はようやく子供にも恵まれ、取り巻きに囲まれ
た生活からも脱却することが出来るのだが…そこにフェルゼ
ン伯爵が現れる。
有名な「パンがないならお菓子を食べればいい」という台詞
には、「そんなことは、言ってはいない」という本人の発言
が加えられるが、そのお菓子の数々は映画の中に見事に再現
される。その他にも髪型や靴のコレクションなど、かなりの
拘わりで作られた作品だ。
また、2005年に生誕250年を迎えたアントワネットを記念し
て、映画の撮影にはベルサイユ宮の略全域に亘って許可が下
り、結婚式の聖堂から、民衆に頭を下げたバルコニーまでの
ほとんどのシーンが、実際に行われた場所で撮影されたとい
うことだ。
究極のセレブと言われるマリー・アントワネットを現代に甦
らせるという計画だが、実は監督も主演も幼い頃から芸能界
に身を置いてきた経験の持ち主で、アントワネットの境遇に
は共感して映画に臨んだというものだそうだ。
従って、主人公の苦しみの描き方などには、かなり現代に通
じるものが感じられるし、確かに、上記の台詞などで誤解さ
れている面の多い王妃の姿を見直すには、絶好の映画製作体
制だったと言える。
華やかだけれど儚い、そんな王妃の姿はそれなりに現実的に
描かれていたように感じられた。

『Life』
多分現実を逃避して生きようとしている若者が、同窓会に向
かう1日を描いた作品。そこには過去の柵があり、その前に
立ち寄った場所でも別の柵を持った人物と出会ってしまう。
そしてその人物と一時的に行動を共にすることになるが…
主人公はいろいろな模様のロウソクを自作するキャンドルア
ーティスト。地方都市の若い芸術家たちのグループに所属し
て日々を暮らしている。身近には中国人の少女や、多少エキ
セントリックな芸術家などもいて、それなりに充実した生活
のつもりのようだ。
そんな彼が、東京で開かれる高校の同窓会に出席するため上
京する。実はその前日、彼は知らない女性の声で待ち合わせ
の時間を変えてくれという留守番電話を受け取り、少し早め
に出発した彼は、その待ち合わせの場所を訪れるが…
現代の若者の生活が、かなり的確に捉えられている作品に見
える。主人公の雰囲気も良いし、特に、そこで起きる事件の
顛末が実に丁寧に描かれていて、それは気持ち良く見ること
が出来る作品だった。
それに撮影はディジタルヴィデオで行われているようだが、
解像度は仕方ないとして、色の再現や、水族館などの照明を
使えない撮影場所でもヴィデオ撮影の特性が良く活かされた
作品になっていた。
芸術家たちのグループでの騒動や、中国人少女の存在、駅で
の出来事や、難病に苦しむ友人や、不慮の事故、通り魔事件
など、何の脈絡もない出来事をこれだけうまくまとめられる
手腕は相当のもののように感じた。

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12月29日(金)
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