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On the Production
by 井口健二
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■墨攻、棚の隅、Starfish Hotel、長州ファイブ、パリジュテーム、天国は待ってくれる、蒼き狼
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『墨攻』“墨攻”
サイトでは昨年12月1日付の第100回で紹介した日本製漫画
の映画化。
1995年度の第40回小学館漫画賞を受賞した森秀樹の長編漫画
を、香港の映画監督ジェイコブ・チャンの脚色、製作、監督
で映画化した作品。
サイトの紹介でも書いたように、この漫画には、その前に酒
見賢一による中島敦賞受賞の原作小説があるが、1990年代半
ばに漫画が香港などで翻訳出版され、それに目を留めたチャ
ン監督が自ら映画化権を獲得して実現したというもので、従
って飽くまでも漫画原作の映画化になるようだ。
時は紀元前3世紀、中国の戦国時代。その時代に「兼愛(自
己の如く他人を愛せ)」と、「非攻」を訴えた墨家。その教
えは思想家の墨子によって始められたものだが、思想だけに
留まらず守りを中心とした兵法も編み出し、その行動は「墨
守」という言葉で現代に伝えられている。
そして本編の物語の舞台は、大国趙と燕の国境にある梁城。
梁王の下、住民約4000人が暮らす小国だが、10万の兵を率い
て燕攻撃に向かう趙の将軍・巷淹中が、燕を攻める前に梁城
を落とそうと考えるのは必至だった。
正に多勢に無勢、そこで梁王は墨家に援軍の派遣を求める。
ところが現れたのは、革離と名乗る男一人だけ。しかし男は
「1カ月持ち堪えれば趙の軍勢は燕に向かわざるを得なくな
る」と説き、圧倒的な軍勢から城を守るための秘策を編み出
して行く。
そして、実際に幾度もの趙軍の攻撃を退けて行くのだが…。
果たして城は守り切ることができるのか。
この革離を、香港のアンディ・ラウ、巷淹中を韓国のアン・
ソンギ、他に中国のファン・ビンビン、台湾のウー・チーロ
ンらが出演、さらに日本からも、撮影監督の阪本善尚、音楽
の川井憲次、照明の大久保武志など、まさに汎東アジア的な
体制で製作されている。
実は、サイトで紹介した後で酒見の原作小説は読んだが、一
応、中国の戦国時代という現実の歴史にある時代背景ではあ
るものの、物語の舞台は架空の城、魔法は出てこないが一種
のヒロイックファンタシーの感覚で楽しむことができたもの
だった。
それが漫画では、さらに荒唐無稽なキャラクターなども登場
して、相当に奇想天外なファンタシーになっていたようだ。
しかし映画では、その荒唐無稽な部分はかなり削除され、あ
る意味でかなり原作の小説に近い形のものになっている。
アクションもかなり現実的で、戦法なども納得できるものに
なっていた。まあ、それが原作漫画のファンにどう取られる
かは判らないが、原作小説の読者としては充分に満足できた
ものだ。それに、映画の後半には酒見の別の小説から採られ
たようなエピソードもあり、それも嬉しいものだった。
上映時間は2時間13分だが、その時間を全く飽きさせない見
事な作品になっている。

『棚の隅』
連城三紀彦原作を、大杉漣主演で映画化した作品。
主人公が経営するちょっと寂れかけた商店街のオモチャ屋。
その店にビジネススーツを着込んだ女性客が入ってくる。彼
女は棚のプラモデルの箱を手にし、半額に値引きされている
値札に見入っている。
その女性は、実は主人公の前の妻で、一人息子の母親でもあ
る。しかし彼女は、子供がまだ赤ん坊の内に姿を消し、主人
公はその子供の世話のために来てくれた女性と再婚、子供は
実の母親と思って育っている。そんな主人公のもとに現れた
元妻の目的は…?
毎年監督の卵たちの作品を観せてもらっているニュー・シネ
マ・ワークショップ(NCW)という映画学校の卒業生が、
商業用の長編を初監督した作品。上映は今年の発表会の一環
として行われたもので、上映後には、監督の門井肇、大杉を
含む出演者も交えたトークショウも開かれた。

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12月28日(木)
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