ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460322hit]
■デジャ・ヴ、エンマ、孔雀、ピンチクリフ・グランプリ、フランシスコの2人の息子、モーツァルトとクジラ、輝く夜明けに向かって
『デジャ・ヴ』“Deja Vu”
『パイレーツ・オブ・カリビアン』の製作者ジェリー・ブラ
ッカイマー、『トップ・ガン』の監督トニー・スコット、そ
して主演はアカデミー賞を主演助演で各1回受賞のデンゼル
・ワシントンという最高の布陣で挑むミステリー。
ハリケーン・カテリーナの傷跡からようやく復興が始まった
ミシシッピー川下流の大都市ニューオリンズ。そこで、毎年
2月末日に行われる全米最大のカーニバル・マルディグラは
今年も盛大に行われようとしていた。
ところが、そのパレードに向かう乗客を満載したフェリー船
が爆発炎上し、死者500人を超える惨事となる。その捜査に
向かったATFの捜査官ダグ・カーリンは、直ちに爆発物の
証拠を収集し、テロ事件として捜査が開始される。
その捜査の機敏さに目を付けたFBIの特別捜査班が彼に協
力を求める。彼が案内されたのは、「タイム・ウィンドウ」
と呼ばれるモニター装置の前。そこには、7個のスパイ衛星
が感知した情報に基づく地上各地の映像が自在の視点から写
し出されるという。
しかし情報処理に時間が掛かり、見られるのは4日と6時間
前の映像で、しかもリピートはできない。そこで、現場の重
要ポイントをいち早く判断できるカーリンに協力が求められ
たのだ。
一方、その前にカーリンは、事件の鍵を握ると思われる若い
女性の遺体を発見しており、直ちに彼は「タイム・ウィンド
ウ」でその女性の家を写し出すように指示する。そこには、
4日前の元気な女性の姿が写し出されるが…
脚本は、『POTC』のテリー・ロッシオと新人のビル・マ
ーシリィが手掛けているが、実はマーシリィは、脚本家の卵
が集まるウェブのチャットルームでロッシオに見いだされた
ということで、以来4年掛けてこの脚本を仕上げている。
デジャ・ヴがパラレルワールドの記憶という説は、ジャック
・フィニーの“Time After Time”などでも採用されている
が、本作はそのアイデアを見事に完成させたものだ。実際、
完成までに4年を要したという脚本は、かなり周到に構築さ
れている。
しかもその結末には、SFファンとしては思わずやられたと
唸ってしまった。これはある意味、ハリウッド版『イルマー
レ』の裏返しなのだが、これこそが正しい結論と言えるもの
だ。その上、そこに持って行く演出の上手さが、それを際立
たせている。
前半のフェリーの爆発炎上シーンなどのVFXの見事さや、
「タイム・ウィンドウ」の映像の巧みさが映画を盛り上げて
いる。そういった意味で、見所満載の作品と言えるものだ。
ただし、あまりに男っぽい話で、サーヴィスカットのような
シーンを除いては、ほとんど色気も何もない。しかも、緻密
に構築された物語は、理科系のSF作家の作品の感じで、そ
の点では、一般の映画ファンには多少物足りない面もあるか
も知れない。
でも、SFファンとしては、今時こんなSF作品に出会える
とは…という感じで、本当に嬉しくなる作品だった。
なお、1回の鑑賞だけでは前半に振られているはずの伏線が
チャンとは確認できておらず、そのためもう一度見たいと思
っている。それが確認できたら、再度書くつもりだ。
『エンマ』
書籍取次会社の日本書籍販売(日販)が製作したヴィデオ作
品。
日販製作のヴィデオ作品は、すでに何本か見せてもらってい
るが、正直に言って今まではあまり気に入った作品の無いの
が現状だった。そんな中で今回の作品は、取り敢えず悪くは
ないと感じたものだ。
物語は渋谷の雑踏で始まる。その中に透明な液体と共に落と
されたハンカチ。そして主人公の若者は失神し、目覚めると
病院のベッドに寝かされていた。同じ部屋には、老若男女が
全部で6人、皆、直近の記憶を失っている。しかも病室には
鍵が掛けられている。
しかし、監視カメラらしきものがあるものの、医者が出入り
している様子はない。そんな状況の中で、刑事を自称する中
年の男が皆を尋問し始める。ところが、突然一人が苦しみだ
[5]続きを読む
12月20日(水)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る