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On the Production
by 井口健二
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■第125回
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※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
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 年内の最終回となる今回は、今度も絢爛豪華となるか…?
というこの話題から。
 紀元前1世紀のエジプトの女王クレオパトラの生涯を描く
計画が、ソニー傘下のコロムビアから発表されている。この
計画は、ピュリッツァー賞受賞者の伝記作家ステイシー・ス
チフが公表した10ページの概要に対して、同社がその権利を
獲得したもので、映画化は製作者のスコット・ルーディンに
よって進められる。
 クレオパトラの映画化というと、何と言っても1963年製作
のエリザベス・テイラー主演作が、ハリウッド映画史上最も
巨額の製作費の投じられた作品として有名だが、実は原作者
の執筆の意図は、映画によって形成された虚飾と欲望に満ち
た女王のイメージを払拭し、真実の女王の姿を描きたいとし
ているものだ。
 つまり執政者として、また軍事的な戦略家としての女王の
姿が中心に描かれるようだが、その一方で、権力を握るため
2人の兄弟と結婚し、互いに殺し合わせたという非情さや、
ローマからやってきたジュリアス・シーザー、マーク・アン
トニーとのロマンスなども描かれるということだ。因に、原
作の出版権はリトルブラウン社が7桁($)の契約金で獲得
しているものだが、その出版は2009年に予定されている。
 従って、映画化はそれ以降になるが、その時には、21世紀
のクレオパトラを誰が演じるかも話題になりそうだ。
 なお製作者のルーディンは、本来はディズニー/ミラマッ
クスと優先契約を結んでいるが、この計画は、第116回で紹
介したナタリー・ポートマン、スカーレット・ヨハンソン、
エリック・バナの共演で、現在撮影中の“The Other Boleyn
Girl”に続いてコロムビアでの製作となっている。
        *         *
 ベストセラー作家のジョン・グリシャムが今年10月に発表
したノンフィクション作品“The Innocent Man: Murder and
Injustice in a Small Town”の映画化権について、ジョー
ジ・クルーニー主宰のスモーク・ハウスとワーナー傘下のイ
ンディペンデント・ピクチャーズ(WIP)が交渉を進めて
いることが公表された。
 この作品は、オクラホマ州で、殺人事件と思い込んだ男の
信憑性に乏しい目撃証言だけで、本人否認のまま11年間も殺
人罪の死刑囚として収監されたロン・ウィリアムスンという
男性の冤罪事件を扱ったもので、グリシャムお得意の法廷劇
が描かれているようだ。
 因に、グリシャム作品の映画化では、『ザ・ファーム』の
大ヒットの後に権利料が暴騰し、2003年にゲイリー・フレダ
ー監督、ジョン・キューザック主演で映画化された『ニュー
オーリンズ・トライアル』では、800万ドルの史上最高額が
記録された。しかしこの頃から、映画各社はあまりに多額と
なった権利料を見直し、その後のグリシャム作品で大手映画
会社絡みで実現したのは、2004年のジョー・ロス監督による
リヴォルーション作品“Christmas with the Kranks”だけ
ということだ。従って、今回のWIPの交渉が成立すると、
それ以来の大手が絡む作品となるものだ。
 一方、グリシャム自身も、その頃から権利料の額より映画
製作そのものに関心を持ち始めていたということで、実は、
『ニューオーリンズ…』の製作では、当初に予定されていた
ウィル・スミス主演、マイク・ニューウェル監督を変更させ
たことで話題にもなっている。また、ヒュー・ウィルスン監
督で映画化された“Mickey”という作品は、グリシャムが製
作費を出資し、大手会社を介さずに公開されたそうだ。
 つまり、グリシャムの意向としては、自分の作品を映画化
する製作者とは近しい関係でいたいというのがあるようで、

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12月15日(金)
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