ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460322hit]

■あなたになら言える秘密のこと、鉄コン筋クリ、硫黄島からの手紙、Mr.ソクラテス、インビジブル2、カジノ・ロワイヤル、百万長者の初恋
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『あなたになら言える秘密のこと』
          “La Vida secreta de las Palabras”
2003年8月に『死ぬまでにしたい10のこと』という作品を
紹介しているスペインの女性監督イザベル・コイシェと、主
演のサラ・ポーリーが再び組んだ作品。
騒音の激しい工場。従業員たちがみな耳栓を付けて作業をし
ている中で、一人だけ何も付けず黙々と作業を続ける女性。
そんな彼女が帰ろうとしたとき、同僚が肩を叩き構内放送を
聞けと指示する。そこで彼女は補聴器のスイッチを入れる。
呼び出された部屋で彼女は、無遅刻で休暇も取らず、働き詰
めの仕事ぶりが労働組合で問題にされていると告げられる。
そして有給休暇を取ることになるのだが、やってきた海辺の
街で、彼女は緊急で看護人を探す男性に声を掛ける。
それは海底油田の掘削基地での仕事で、事故で火傷を負い、
一時的に盲目にもなっている男性を、搬送できるようになる
までの看護するというもの。火傷治療の経験もある元看護師
と名告る彼女は、その仕事を引き受けることになる。
こうして看護を始めた彼女に、患者の男性は彼女の身の上を
問いかける。しかし彼女は、いつもはぐらかして、決して自
分の身の上を語ることはない。そんな頑なな彼女だったが、
絶海の孤島のような掘削基地で過ごすうち、徐々に心が開放
されて行く。
そんな彼女の変化が、白飯とチキンとリンゴしか食べないと
言っていた彼女が、基地のコックが作ったニョッキを口にし
て、貪るように平らげてしまったり、基地に駐在する海洋学
者の熱弁に感動したりという微妙な表現で描かれて行く。
しかしそれでも口にすることのなかった身の上話を、男性が
搬送される日の前日、ついに彼に語り始めるのだが…
ここからは、多分宣伝でも使われることはないものだが、こ
こで語られる内容の衝撃は、尋常ではなかった。実際に物語
の中では、もっと彼女の身の上を知りたいと言う男性に対し
て、「あなたはもっと恐怖を味わいたいのか」という答まで
用意されているものだ。
しかも、その物語の背景は、たった10年ほど前のことでしか
ない。それに、ここで語られることが事実として起きていた
ことを、恥ずかしいことに僕は知らなかった。それは報道さ
れたことかも知れないが、僕はそんな報道を見ていないし、
それが皆の口に上るほどには報道もされなかったはずだ。
こんなことが現実に起き、それがすでに忘れ去られようとし
ている。当然、当事者たちは忘れるはずもないことだが、そ
の当事者たちは、生き残ってしまったこと自体を恥として、
それについては心に秘めたまま口を開くことさえしない。
そんな重たい現実が胸に突き刺さってくる作品だった。
共演は、重症患者の男性にティム・ロビンス、基地のコック
役に『トーク・トゥ・ハー』などのハビエル・カマラ、そし
てジュリー・クリスティーが重要な役で出ている。
本作は、今年の東京国際映画祭と併催の女性映画祭で上映さ
れた。でもそれは六本木と渋谷のメイン会場ではなく、表参
道のウィメンズプラザで上映されたものだ。何故この作品が
メイン会場で上映されなかったのかにも疑問を感じた。
なお、映画の途中で、突然日本語の歌が聞こえてきた。その
歌は、エンドロールによるとKENKA WA KIRAIという題名だそ
うだが、アニメの主題歌のような感じのものだった。その他
にも、“Voyage to the Bottom of the Sea”“Mr.Magoo”
などの話題が出てきたり、その辺はちょっと不思議な感じの
作品でもあった。

『鉄コン筋クリート』
松本大洋原作のコミックのアニメ化。
20世紀の色を残しながらも再開発の波に晒され、新しい街へ
と変貌しつつある宝町という名の下町を舞台に、街を守ろう
とする少年たちと、再開発に加担する大人ヤクザとの闘いを

[5]続きを読む

11月20日(月)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る