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On the Production
by 井口健二
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■酒井家のしあわせ、めぐみ、沈黙の傭兵、恋人たちの失われた革命、パプリカ、ファミリー、華麗なる恋の舞台で
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※
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『酒井家のしあわせ』
サンダンス・NHK国際映像作家賞・日本部門を2005年に受
賞した呉美保の監督デビュー作。この賞は脚本段階で選考さ
れるもので、大林宣彦監督の下にいたこともある呉は、フリ
ーランスのスクリプターをしながら脚本を書き上げ、栄冠に
輝いたということだ。
そしてその脚本を自らの初監督で映画化したものだ。
物語は、三重県伊賀上野が舞台。酒井家は、中学2年の息子
と5歳の娘を含む4人家族だが、実は母親は再婚で前の結婚
では夫と長男を事故で亡くしている。そして息子は先夫との
間の子で、娘は再婚後の子供だが、父親は別け隔てなく接し
ようとしている。
しかし息子は思春期で、両親の存在をウザク感じており、一
方、しつけに厳しい母親の態度に対しては、夫婦の間も何と
なく言い争いが日常茶飯時となっている状況だ。そんな家庭
の姿が、息子の目を通して語られて行く。
とまあ、ここまではどこにでもありそうな一家の風景なのだ
が、ある日、父親が突然ゲイをカミングアウトして家を出て
行ってしまったことから、一家に危機が訪れる。そして母親
は、その町を離れ、実家のある大阪へに引っ越しを決めるの
だが…
ちょっと普通ではありそうもない話だが、もしかしたらどこ
にでもあるかも知れない、そんな物語だ。家族の幸せを一番
に考える父親と、その考えを理解し切れていない家族。監督
は女性だが、僕にはこの父親の行動が何となく良く理解でき
るような気がした。
僕も同じ立場になったら、こんな行動も考えてしまうかも知
れない。ふとそんなことも考えてしまった。もちろん、物語
は映画的でやり過ぎのお話ではあるが。これがある種の男の
ロマンでもあるかもしれない、とも思えた。
出演は、息子役を3歳の時から芸歴があるという『血と骨』
などの森田直幸、父親役をユースケ・サンタマリア、母親役
を友近。そして幼い妹役が鍋本凪々美。実際に中学2年とい
う森田の演技が良く。また、両親役の2人も見事に填ってい
た。
他に、濱田マリ、栗原卓也、三浦誠己、谷村美月、本上まな
み、赤井英和、高知東生。
同級生を演じる栗原は、大阪府大会優勝経験もあるサッカー
少年だそうで、同じくサッカー好きという森田とのボールを
使ったシーンは様になっていた。また谷村は、「海賊版撲滅
キャンペーン」のキャラクターとしてお馴染みの顔だ。
『めぐみ』“Abduction: The Megumi Yokota Story”
北朝鮮による日本人拉致事件を、初めて日本人以外の目で追
ったドキュメンタリー。監督はアメリカ在住のクリス・シェ
リダンとパティ・キム夫妻。製作を『ピアノ・レッスン』な
どの女性監督ジェーン・カンピオンが手掛けている。
1977年11月15日朝、普段通り学校へ向かった少女は帰ってこ
なかった。当時13歳の少女・横田めぐみを襲った拉致事件。
認定被害者数16人とされるこの国際的陰謀を、彼女の両親で
ある滋、早紀江夫妻と、同じく被害者・増元るみ子の兄照明
の姿を中心にまとめている。
1977年というと、SF映画史的には『スター・ウォーズ』が
アメリカで公開された年だ。それからすでに30年が経過して
いる訳だが、それでもまだ歴史の中に織り込むには早過ぎる
という感じがする。現時点でも動いている事件という感じの
するものだ。
実際、新潟の事件が報道され、世間に知られるのは1997年の
ことだから、それからはまだ10年しか経っていない訳だが、
恐らくそれまで政府にも相手にされなかったものが、一転、
小泉パフォーマンスの材料にされるなど、政府に利用され続
けた事件とも言える。
彼女の生死を含め、北朝鮮が隠し続ける事件の全貌はいまだ
明らかでないし、その点ではこのドキュメンタリーも中途半
端な形で終わらざるを得ない。しかし、事件は決してうやむ
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11月10日(金)
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