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On the Production
by 井口健二
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■東京国際映画祭2006コンペティションその2
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※このページでは、東京国際映画祭のコンペティションで※
※上映された作品から紹介します。 ※
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『チェンジ・オブ・アドレス』
今年の審査委員長をジャン=ピエール・ジュネが務める関係
からか、コンペティションにはここ数年選ばれていなかった
フランス映画が2本選出されている。その内の1本。
舞台は現代のパリ。楽団に入るために上京したホルン奏者の
ダヴィッドが部屋を探している。そこに声を掛けたアナは、
友人のものとして部屋を紹介するが、実はその部屋は彼女の
もので、2人はルームメイトとなる。
ダヴィッドの引っ越しが完了した晩、2人はワインで乾杯し
ベッドを共にするが、アナは他に恋人がいると宣言。一方、
ダヴィッドも資産家の娘ジュリアにホルンを個人教授するこ
とになり、彼女に好意を寄せて行く。
そしてジュリアの本心を知りたいダヴィッドは、アナの助言
で、ジュリアを誘ってアナの所有する海辺の別荘に週末旅行
に出掛けるが…
まあ、何とも古典的な恋愛ドラマを見事に現代に甦らせたと
いう感じの作品。でもそこに展開する物語は、巧みに現代を
反映させているし、その手腕はなかなかなものだ。
脚本監督と主人公のダヴィッドも演じるエマニュエル・ムレ
は本作が第3作。前作がセンチメンタルな作品だったから、
本作では陽気な作品を目指したということだが、見事に納ま
って行く物語には思わず笑みがこぼれた。
それにしても女性2人を相手にするこのような物語は、下手
をすると願望充足に陥ってしまうものだが、この作品はそう
いうところにも落ちておらず、最後まで洒落た感じのドラマ
に仕上げていることにも感心した。
『十三の桐』
町中をラクダが歩く中国西部の小都市に暮らす10代の少年少
女たちの物語。
主人公の少女は、腕の立つボーイフレンドと共に、校内でも
一目置かれる存在だ。そんな彼女達のクラスに、2人の転入
生がやってくる。その1人は兄が死んで保険が下りたという
金持ちの息子で、もう1人は西域からやってきたちょっと粗
暴な少年。
その西域から来た少年は、顔繋ぎに昼飯に学校近くの屋台で
バーベキューを奢ると言い出すが、その実は金持ちの息子に
たかる魂胆だった。ところがそれに文句を言った主人公に少
年は好意を寄せるようになり、一方、元からのボーイフレン
ドは女性教師の寵愛を受けて疎遠になって行く。
そんな状況の変化の中で、主人公と少年関係は深くなって行
くが、ある日2人が揃って試験に遅刻したことから、学校は
2人の行動を問題にし始める。そして暴力行為を働いた少年
に学校は停学処分を課し、それに反発した少女は…
物語の背景は1999年となっているが、10代の少年少女の行動
というは、国の体制がどうであれ、あまり変わらないものだ
と再認識される作品だ。恐らく同じようなことは日本でも起
きているのだろうし、アメリカでもあるのかも知れない。
監督はこの物語を驚きの目を持って描いたようだが、日本人
の感覚というか、日本で描かれているドラマからするとさほ
どの驚きは感じられない。その点では、この作品は甘いよう
にも感じられた。今の時代には、もっと厳しい現実が待ち構
えているものだと思う。
『リトル・ミス・サンシャイン』
今年のサンダンス映画祭でも話題になったアメリカ映画。
成功のためのアクションプログラムを講演で唱えながらも、
自身は全く成功していない父親と、ニーチェに心酔し空軍の
テストパイロットを目指して無言の行を続けている長男。そ
れに、ドラッグ漬けのグランパ。
そこに転がり込んできた全米1のプルースト学者を自認しな
がらも2位の学者に嫉妬して自殺を図ったゲイの叔父さん。
その叔父の妹でもある母親。
そんな一家と共に暮らすオリーブは、全米美少女コンテスト
「リトル・ミス・サンシャイン」の座を目指す健康的な少女
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11月09日(木)
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