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On the Production
by 井口健二
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■映画監督って何だ!、TANNKA、モンスター・ハウス、父親たちの星条旗、手紙、ナイトメアー・ビフォア・クリスマス−3D
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※
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『映画監督って何だ!』
日本映画監督協会創立70周年記念映画と銘打たれた作品。
1970年施行の新著作権法第29条における「映画の著作権は映
画製作者に帰属する」という条項について、施行以来反対運
動を続けている日本監督協会の主張を、インタヴューや再現
ドラマを通じて検証したプロパガンダ作品。
映画の著作権の帰属については、1970年当時に問題にされた
ことは記憶にあるが、その後に何の進展もなかったというこ
とにまず驚かされた。この点は協会の運動不足が否めない感
じだ。それがようやく反対の意思表示をした作品を作り上げ
たというものだ。
その反対の根拠として、実は1970年法以前に施行されていた
1931年改正による旧著作権法では、「映画の著作権は最初に
監督に帰属し、その完成と同時に映画会社に移る」とする解
釈が成立していたということは改めて認識した。
本作では、その著作権法が、1970年の法改正に向けた国会審
議の中で歪められて行く過程が、国会議事録に基づく再現ド
ラマの中で克明に描かれている。その再現ドラマを始め、著
作権法を解説するコントなどが、約200人の映画監督のメイ
演技で演じられたものだ。
映画監督といっても、テレビのレポーターやコメンテーター
などで知った顔も多く、その人たちはそれなりの演技をして
いるから、見ていてわっと言うようなところはなかった。
ただし、五所平之介監督作品の脚本を3人の監督が独自の解
釈で撮り直し、監督の独自性を示すという試みは、準備不足
なのか多少無理があるように感じたし、江戸時代の長屋を舞
台にした法律の説明コントも、かえって判り難くしているよ
うにも感じられた。
これに対して、国会の再現ドラマは思いが込められているせ
いかかなりの熱演ぶりだ。中でも、藤本真澄東宝社長の審議
委員会での証言のシーンなどは、後で全面否定される部分も
含めて、こんな詭弁がまかり通っていたのかと驚かされた。
それでも結局は、共産党も含めた全会一致で法案は可決され
てしまうのだから、ここでも監督協会の力不足が再認識され
てしまう。今なら発言力のある監督も多いし、今からでもも
っと声を上げるべきではないのか、そんなことも感じた。
なお、藤本証言は、「戦後、映画製作者は戦犯として訴追さ
れたが、監督でその嫌疑をかけられた者はいない」とするも
の、しかしこれは、実際には戦犯ではなく、企業家に対する
公職追放の話で、それも3年で解除されたそうだ。
それに対して、「『黒い雪』や『愛のコリーダ』で監督は被
告席に立ったが、映画製作者は一人も訴追されなかった」と
言う意見にはなるほどと思わされた。
なお、エンディングでは、宇崎竜童が歌うラップによる日本
映画の題名100本以上を綴った主題歌が流れ、これはかなり
面白かった。
『TANNKA』
歌人の俵万智が読売新聞に連載した処女小説の映画化。
この原作から作詞家の阿木燿子が脚色し、映画監督デビュー
を飾った作品。
女性フリーライターとして活躍する主人公は33歳。不倫では
あるが男性カメラマンと9年越しの関係を持ち、仕事も恋も
充実した日々を送っていると思っている。ところがそこに若
い男性が現れ、彼の情熱に惑う彼女は、やがて自分の生き方
にも疑問を持ち始める。
僕は男だから描かれている女性の心理には判らないところが
多いが、結局彼女は、今回のことがなければ、不倫のまま満
足して一生を送れたのだろうか。確かに『地下鉄に乗って』
の常盤貴子の役もそんな女性のように思えるが、女性はこれ
に納得できるのかな?
男性の観客としては、そんなことを考えながら見終えた作品
だが、恐らく僕などは想定外の観客なのだろうし、本作は女
性が見て共感を呼ぶことができれば、それで充分なものだろ
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10月20日(金)
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