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On the Production
by 井口健二
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■バタリアン5、日本心中、オープン・シーズン、ファースト・ディセント、Brothers of the Head、氷の微笑2、あるいは裏切りという名の犬
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『バタリアン5』
   “Return of the Living Dead: Rave to the Grave”
春に『4』を紹介した時にも書いたように、本作は2本撮り
で製作されたもので、言ってみれば本作はその後編のような
ものだ。ただし、流れは一応つながっているものの、前作か
ら継続した展開はほとんどなく、前作を見ていなくても問題
はない。
また、前作は化学研究所を舞台にして、ちょっと『バイオハ
ザード』の亜流のような感じの部分もあったが、今回は学園
が舞台で、前作以上にティーンズホラーの様相を呈してきて
いるものだ。
物語の発端は、いつものように薬品の入ったドラム缶の移動
から始まる。それを組織に売りつけようとした科学者は失敗
し、その間に別のドラム缶が学園に運び込まれる。そしてゾ
ンビの大量生産。こうして生み出されたゾンビの群れが若者
たちを襲い始める。
『4』の紹介では、オリジナルに比べてパロディの要素が少
ないと書いたものだが、本作に至っては、もはや本格的にゾ
ンビ物と作ろうという意志が感じられてきたものだ。その点
では前作よりホラーとして良い感じになってきている。
実際、本作のクライマックスで、若者たちが集まるハロウィ
ンパーティをゾンビの群れが襲うという展開は、定番だが規
模が大きくて、それなりに面白いものにも感じられた。
なお物語の舞台はアメリカだが、撮影はルーマニアで行われ
たもので、このパーティシーンの撮影は、ロケハン中に見つ
けたというチャウシェスク時代に建てられた野外劇場で行わ
れている。この半ば廃虚と化した劇場の雰囲気はなかなか良
い感じだった。
正直に言って、前作は多少評価に窮するところもあったが、
今回はB級ホラーとしてはそれなりに見られる作品になって
いるようにも感じた。映画の終わり方は『6』も期待させる
感じだったが、この調子で続けてくれるならそれも良しとい
うところだろう。
なお出演は、前作に引き続いてのピーター・コヨーテ、ジョ
ン・キーフ、コリー・ハードリクトらだが、考えてみたらこ
の連中、特に若い2人は前作で同じ目に逢っているはずで、
本作で全くその経験が活かされていないのは、多少解せない
感じだ。

『9.11-8.15 日本心中』
1994年に昭和天皇を主題とした版画シリーズを発表して物議
を醸した画家・大浦信行が、美術評論家・針生一郎を主役と
して2001年に発表した映画『日本心中』を再構築し、新たに
重信メイ(重信房子の娘)を加えて戦後日本の一側面を描い
たドキュメンタリー。
監督は過去の作品から見て左翼系の人と思われるが、この作
品では、針生と重信の2人の目を通して、日本の左翼運動の
あり方を問うているようにも思える。
しかも、それが意図的かどうかは判らないが、針生と鶴見俊
輔ら左翼の論客と呼ばれる人たちとの恥ずかしいまでに薄っ
ぺらで実のない対話と、重信と韓国の反戦詩人・金芝河との
見事な対話を対比させることで、日本の左翼の現状が見えて
くる感じもするものだ。
実際、この映画に出てくる日本側の大半の連中が、到底民衆
の心など捕えられないような空論を繰り広げているのに対し
て、重信や金の真摯に現在を捉え、未来を展望しようとする
姿は、日本の左翼運動に絶望している者にとってはわずかな
光明のようにも見えた。
2時間25分の上映時間は、最初はかなりしんどくなりそうな
感じで始まったが、重信の登場から後半の金との対話のシー
ンは、その内容の深さに思わず身を乗り出してしまうような
見事なものだった。
中でも、金が「実は若い頃には爆弾製造で手配されていた」
と言い出した辺りは、単純に反戦詩人=無抵抗と思っていた
僕にはちょっと衝撃でもあった。
さらに映画は、画家でもある監督の目を通して、藤田嗣治の

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10月10日(火)
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