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On the Production
by 井口健二
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■第118回
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※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
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 最初は、前回約束した“The Prisoner”について、もう少
し詳しく紹介しておこう。
 “The Prisoner”(邦題:プリズナーNo.6)は、1967年に
17話だけ製作されたイギリス製のテレビシリーズで、アメリ
カでは1968年にCBSテレビで放送され、日本では1969年の
3月からNHKで放送されたものだ。
 主演はパトリック・マッグーハン。彼は、1961年放送開始
の“Danger Man”(秘密命令)というモノクロ30分のシリー
ズで、ジョン・ドレイクという名のNATOのスパイ役を演
じて人気を得、やがてそれが1964年放送開始のカラー60分シ
リーズ“Secret Agent”(秘密諜報員ジョン・ドレイク)に
発展してアメリカでも知られるようになる。
 因に“Secret Agent”というのはアメリカでの題名で、イ
ギリスでは新シリーズも“Danger Man”のタイトルで放送さ
れていたようだ。そしてこのシリーズは、アメリカで付けら
れた主題歌“Secret Agent Man”も大ヒットするなど話題と
なり、マッグーハンの人気を確定させた。
 その人気を背景に、自らの製作総指揮、主要なエピソード
では脚本監督も務めて発表されたのが、“The Prisoner”と
いうシリーズだった。
 物語は、一人の秘密諜報員と思われる男が激昂し、辞表を
叩き付けるところから始まる。そして彼の記録カードを抹消
する映像が続くのだが、帰宅した男は催眠ガスで眠らされ、
目覚めるとリゾート地を思わせる小さな家の点在する「村」
と呼ばれる場所に幽閉されている。そこでは個人の名前は使
われず、住民たちは番号だけで呼ばれる。そして、主人公の
呼び名はNo.6とされる。
 村は姿を見せないNo.1によって支配されているらしいが、
実際はNo.2と呼ばれる人物が全てを仕切っている。しかしそ
のNo.2は、エピソードごとに人物が変わってしまうような存
在だ。そんな中でNo.6は、毎回変わるNo.2から、辞表を提出
した理由を問い詰められるのだが…
 主人公にとっては、その場所が敵国の施設で母国の秘密を
探ろうとしているのかも知れず。あるいは今まで所属してい
た組織の施設で忠誠心を試されているのかも知れない。しか
し、いずれにしても彼の持つ秘密は絶対に明かしてはいけな
いものだ。そんな状況下で主人公は、毎回No.2の裏を掻いて
脱出を試み続けるというお話だった。
 実際、物語は不条理劇とも言えるエピソードの連続で、中
でも主人公の脱出を最後に阻止するRoverと呼ばれる白い巨
大な球体(吹き替えで「オレンジ警報」というのは覚えてい
るが球体の名前は記憶にない)の存在は、その象徴とも言え
た。また、No.2が情報を聞き出すのに用いる手口も、かなり
奇想天外なものが実行されていた。このような内容から、こ
のシリーズはスパイものと言うよりはSFとして評価される
ことが多く、当時出版されたノヴェライズもSF作家によっ
て書かれたものだ。
 一方、製作の時期からこのシリーズは“Secret Agent”=
“Danger Man”の続きとの見方もされ、実際上記のノヴェラ
イズでは、主人公の本名はジョン・ドレイクとなっていた。
また、今回調査した中では、“The Prisoner”のイギリスで
の放送は1967年9月29日から翌年2月2日までされたものだ
が、実はその間の1月5日と1月12日には“Danger Man”の
最終2話の放送も行われている。
 この2話は、1964年にスタートした番組の第3シーズン用
として1966年に製作されたものだが、番組がキャンセルされ
たために以降の製作は中止され、1966年に2話合体して単発
で放送されたもののシリーズとしては放送されていなかった
ようだ。その2話が突如放送されているものだが、実はこの
中には“The Prisoner”にも登場する同じ役名のキャラクタ

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09月01日(金)
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