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On the Production
by 井口健二
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■Oiビシクレッタ、旅の贈りもの−0:00発、アダム、雨音にきみを想う、白日夢、もしも昨日が選べたら、待合室
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※
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『Oiビシクレッタ』“O Caminho das Nuvens”
ブラジルの風景と言うと、直にはアマゾンのジャングルか、
リオデジャネイロの喧噪しか思い浮かばないが、2004年8月
に紹介した映画『ビハインド・ザ・サン』では、ちょっと砂
漠にも似た気候風土が背景になっていた。
この作品は、そんな地域が舞台になっている感じだ。
ブラジルの北東部、と言ってもプレス資料の地図で見るとア
マゾンよりは南で、つまりリオデジャネイロより北東の地域
を指すらしいが、ブラジルでも最も貧困と言われるその地域
の町から、4台の自転車に家族7人が分乗、リオを目指して
3200kmを走破した一家の物語。
現実にリオの市街地の外れには、北東部から移住した人々が
集まって住む地区があるそうだ。ただし、そこにいる人々の
大半は貨物トラックの荷台に揺られてやって来た。しかしこ
の一家は、父親が家族と離れることを拒み、一家で自転車を
漕いでリオを目指す。
因に、物語は実話に基づくが、実話の一家は自転車4台に家
族は8人だったそうだ。なお、邦題の『ビシクレッタ』とい
うのは自転車の意味だ。
そんな一家は、当然野宿で、路傍のサーヴィスステーション
などで夜を過ごすのだが、そこでは暖かく迎えられたり暴力
で追い出されたり、そんな現実が、それでも何となく明るい
一家の生活ぶりとともに語られて行く。
実は、父親は非識字者で、リオに行けば家族を平穏に養える
という夢ともつかない信念だけで進んで行くものだが、母親
は字も読めるし唄も歌えて、ギターを弾く次男とともに稼い
だりもできる。そんなちょっと歪な関係が余計に父親を駆り
立てる面もありそうだ。
そして家族の中では、ちょっと父親に似た性格の長男の存在
もドラマを造り出す。この父親と長男を演じるのは、『ビハ
インド…』では兄弟役で共演していたヴァグネル・モーラと
ラヴィ・ラモス・アセルダ。他に母親役で、1997年の『クア
トロ・ディアス』に出演のクラウジア・アレウが出ている。
映画は、ブラジルで国民的歌手といわれるロベルト・カルロ
スの音楽を随所の取り入れて描かれたもので、最後には本人
の姿も登場する。このことはこの映画が、それだけの支持を
受けて作られたことの証明でもあるようだ。またブラジルで
の試写会は、北東部出身者の大統領の前でも行われ、大統領
は感涙に咽んだそうだ。
『旅の贈りもの−0:00発』
大阪駅を月に1回だけ午前0:00に発車する企画列車。そ
れは行く先不詳のミステリートレインだが、9800円の往復切
符を買えば誰でも乗れる列車だった。
そんな列車に、ある者はたまたまそこに居合わせたことによ
る偶然から、またある者は忘れていた貰いものの切符を思い
出して、またある者は意を決して乗り込んでくる。そんな男
女5人を乗せた列車がたどり着いた先は…
ファンタシーを期待した人には、残念ながらそういう物語で
はない。しかし、描かれた物語は現代の寓話でもあり、充分
にファンタスティックなものだ。
たどり着いた先は、住民が「あの頃町」と自嘲気味に呼ぶ昔
栄えた湊町。北前船の風待ち港として立ち寄る舟人を暖かく
迎えた気風の残る町だが、若者の姿はほとんどなく、老人ば
かりが暮らす典型的な過疎の町。そこに、都会の喧噪に疲れ
た男女が降り立つ。
まあ、タイトルから推察されるように、男女はそこで人生を
見詰め直し、新たな人生に立ち向かって行く勇気を贈られる
わけだが、正直に言って物語は甘すぎるくらいに甘い。でも
そんな甘さが、唯々心地よいというのも良いものだ。
脚本は、(株)日本旅行での国内旅行企画を経て新版『ウルト
ラQ〜dark fantasy〜』などを手掛けた篠原高志。監督は、
平成版『ウルトラマン』シリーズでレギュラー監督を務めた
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08月31日(木)
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