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On the Production
by 井口健二
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■第117回
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※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
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 まずはこの話題から。
 『ブレードランナー』の原作者として知られるアメリカの
SF作家フィリップ・K・ディックの伝記映画が計画され、
その作家役に『シンデレラマン』や“Lady in the Water”
のポール・ギアマッティが交渉されている。
 ディックは1982年、彼の原作『アンドロイドは電気羊の夢
を見るか?』を映画化した『ブレード…』の完成を待たずに
他界したが、その死後になって、大作だけでも『トータル・
リコール』から『マイノリティ・リポート』、そして新作の
“A Scanner Darkly”など、多数の映画化の原作を提供し、
映画ファンにも一躍その名前を轟かせた。
 そのディックの伝記映画が初めて遺族の公認を得て製作さ
れるものだが、作品には、いわゆる伝記映画とはちょっと違
った趣向が凝らされるようで、具体的にはデュックの未完と
なった遺作“The Owl in Daylight”をモティーフにして、
その小説のキャラクターなどが登場して彼の人生が描かれる
ということだ。なお、脚本には作家ハンター・S・トンプソ
ンの半自伝的作品とも言われる“Fear and Loathing in Las
Vegas”(ラスベガスをやっつけろ)などを手掛けたトニー
・グリゾーニが契約している。
 題名や監督は未発表だが、製作は、カンヌで話題になった
『バベル』や、前回紹介した“Case 39”を手掛けるアノニ
マス・コンテントが行っている。因に同社の作品は、基本的
にはパラマウント系の配給になるようだ。またギアマッティ
は、出演が決まると製作者にも名を連ねることになる。
 小説家を描いた作品ということでは、『カポーティ』が、
主演のフィリップ・シーモア・ホフマンにオスカーをもたら
すなど話題になっているが、この後には、2005年10月1日付
第96回などで紹介したベアトリス・ポッターの生涯をルネ・
ゼルウィガーの主演で描く“Miss Potter”の公開も、全米
では年内に予定されており、さらにハンター・S・トンプソ
ンの別の自伝的作品“The Rum Dialy”もジョニー・デップ
の主演で計画されるなど、注目を浴びそうだ。
        *         *
 お次は、2001年以来のシリーズ第3作“Rush Hour 3”の
撮影を9月に控えるブレット・ラトナー監督の次の計画で、
1978年にフランクリン・J・シャフナー監督で映画化された
アイラ・レヴィン原作“The Boys From Brazil”(日本未公
開)のリメイクを行うことが発表された。
 『ローズマリーの赤ちゃん』や『ステップフォードの妻た
ち』の原作者としても知られるレヴィンの原作は、1970年代
を背景に、ナチスの残党が第3帝国復活のため南米で行って
いた恐怖の実験を暴くというもので、当時はまだ研究の端緒
だったクローン技術も背景となっていた。そして1978年の映
画化では、ローレンス・オリヴィエとグレゴリー・ペックと
いう英米の名優の共演も話題となったものだ。
 その現代化リメイクを今回は目指すものだが、原作の物語
は1970年代の時代背景に完璧にフィットしているということ
で、その現代化にはちょっと神経を使う必要がありそうだ。
その脚色は、リチャード・ポッターとマシュー・ストラヴィ
ッツというコンビが担当することになっている。
 ただしラトナーは、「オリジナルは素晴らしい作品、でも
今ならクローンの説明などは不要だね」と語るなど、勝算は
見ているようだ。またラトナーは、“Red Dragon”のような
サスペンス作品のリメイクもそつなくこなした実績があり、
今回のような題材にも不安はない。
 製作はニューライン。なお、“Rush Hour 3”の全米公開
は来年8月10日と発表されており、本作はそれに続けての製
作が期待されている。因に、今年公開の“X-Men 3”を手掛

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08月15日(火)
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