ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■奇跡の朝、ルイーズに訪れた恋は…、海と夕陽と…、バックダンサーズ、46億年の恋、サンクチュアリ、エリー・パーカー、16ブロック
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『奇跡の朝』“Les Revenants”
死者の甦りを描いた2004年のフランス映画。
ある朝、町の共同墓地からここ10年以内に死んだ人々が甦っ
て出てくる。その人々は、健康状態も良好で、普通の生活を
送れる状態だったが、行動のリズムが少しずれており、夜も
あまり眠らないようだった。そしてそれは、世界中で起きて
いる出来事だった。
こんな異常な状況を、とある町を舞台に描いた作品。
映画の中では甦りの原因は何も説明されず、ただあるが儘の
状況として描かれる。しかもそれへの対応が、国連や赤十字
が難民としての支援を行っていたり、科学者が行動様式の研
究を行ったりと、かなり現実的に描かれている。
そんな中で、主に描かれる3つの家族では、老いて亡くなっ
た妻や、若くして亡くなった恋人、そして幼くして亡くなっ
た子供などの甦りを迎える人々の、戸惑いやいろいろな思い
が描かれて行く。
実は、僕はここ10年間に自分に近い家族を亡くしていないの
で、その意味では冷静に見ることができたが、終映後話しか
けてくれた宣伝担当の方は現実的に見てしまう状況だったよ
うで、その立場からはまた違った感想にもなるようだ。
とは言え、映画のテーマは死者の甦り、その点では、日本映
画からゾンビまでいろいろあるが、本作では、妙な情に流さ
れたりスプラッターにもせず、真摯にテーマを捉えていると
いうことでは画期的な作品と言える。
特に、甦った人々が未練や怨念を持たず客観的に描かれてい
ることから、物語はそれを迎える人々の側だけで明確に描か
れるが、中には、甦っていることを知りながら迎えに行けな
い人もいて、そんな心情も考えさせられるところだ。
しかし本作は、そういった生者の側にもあまり深入りせず、
距離をおいて描いており、その点では題材だけを提示して、
後は観客に考えさせようという意図も感じられる。
スプラッターのゾンビものは別として、死者の甦りを個人的
な感情だけでべたべたと描かれるのは食傷気味だ。しかし、
本作のような形で冷静に描かれると、人の生と死について改
めて考えさせられる思いがした。
そう言えば、ロメロは『ゾンビ』を死者への思い遣りで描い
たと言い、作品の中でも、ゾンビ化した知人を抹殺できず保
護してしまうエピソードもあった気がするが、そんなところ
にも通じる作品だ。

『ルイーズに訪れた恋は…』“P.S.”
主人公は、東海岸の名門コロムビア大学で入学審査部の部長
を務める女性。年齢39歳で、天文学の教授との12年間の結婚
生活に最近終止符を打ったところだ。でもその教授とは、今
も友人としてつきあっている。
そんな主人公の許に1通の入学願書が届けられる。ところが
その志願者の名前は、高校時代に交通事故で死んだ初恋の相
手と同じ名前だった。しかも、その志望先は初恋の相手が目
指していたかも知れない絵画科…
このような状況下で、主人公はその志願者に個人面接を設定
するのだが、果たして現れたのは、初恋の相手の面影を持つ
15歳年下の青年だった。
これだけ書くと、何か超自然的なものを感じさせるが、物語
の主眼はそこではなく、純粋に新しい恋に迷っている女性の
心理を描いたものだ。しかも、新しい恋を始めたことによる
彼女自身と、彼女の周囲のいろいろな変化が描かれて行く。
主演は、『ミスティック・リバー』などのローラ・リニー、
相手役に、来春“Spider-Man 3”での新悪役が控えるトファ
ー・グレイス。他に、ガブリエル・バーン、マーシャ・ゲイ
・ハーディンなど。
脚本監督は、テレビ出身で2002年に監督デビュー作“Roger
Dodger”がヴェネチア映画祭の新人監督賞などを受賞したデ
ィラン・キッドの第2作。原作は、書評家でもあるヘレン・
シュルマンの同名の作品で、彼女は監督と共に共同脚本も手

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08月10日(木)
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