ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460329hit]
■ワン・ラブ、レイヤー・ケーキ、カポーティ、サムサッカー、ジダン、ファントマ
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『ワン・ラブ』“One Love”
ジャマイカを舞台に、レゲエを手立てに世界に出ようとする
ラスタファリアンの若者と、敬虔なクリスチャンの娘が繰り
広げるラヴ・ストーリー。
映画の題名は、レゲエの神様とも言われるボブ・マーリーの
楽曲から採られており、その主人公を、ボブの息子で本人も
歌手が本業のキマーニ・マーリーが演じている。またヒロイ
ンは、こちらも歌手が本業のシェリーヌ・アンダースン。
監督は、イギリスのDJ出身でプロモフィルムなどを多数手
掛けているドン・レッツと、同じくプロモ監督のリック・エ
ルグッド。脚本はジャマイカ出身のトレヴァー・ローヌ。
物語は、クリスチャンと地元の宗教ラスタファリアンズの対
立を背景に、方やゴスペル、方やレゲエで、賞金2万ドルの
コンテストに挑む2人が、宗教や音楽の垣根を超えて結ばれ
て行く姿を描く。
といっても、現実にはクリスチャンとラスタとの間にこのよ
うな顕著な対立はないそうで、お話には誇張があるようだ。
しかし映画では、裕福なクリスチャンと貧しいラスタとの生
活レベルの違いなどはかなり丁寧に描かれており、このご時
世では、今は楽園でもこれから先どうなるかは判らないとい
う印象は受けた。
父親の作品から題名の採られた映画の主人公を息子が演じる
といっても、別段父親の伝記という訳ではない。また、正直
に言って、主演2人の演技は、監督の力不足もあるのだろう
が、プロの演技と言えるほどのものではない。
ただし、お話自体も他愛ないものだし、言ってみれば現代の
おとぎ話という感じの作品でもあるから、そんな作品には演
技も多少ぎこちない方が似合っているかも知れない。そう考
えると、物語にはちゃんと魔法も出てくるし、辻褄は合って
いるものだ。
それに、いろいろ出てくる歌唱シーンはさすがに堂々として
いて、それを聞くだけでも価値があるとも言える。特にシェ
リーヌのゴスペルからレゲエまで歌いこなす歌唱は、聞いて
いるだけで気持ちが良かった。
『レイヤー・ケーキ』“Layer Cake”
ガイ・リッチー監督の作品を製作者として裏で支えてきたマ
シュー・ヴォーンが初監督した2004年製作のイギリス映画。
主演は新007に抜擢されたダニエル・クレイグ。
イギリスの裏社会で麻薬のディーラーとして地位を固めてき
た主人公は、仕事から身を退く潮時を考えていた。ところが
そこに、100万錠に及ぶエクスタシー(1錠5ポンド)の取
り引きと、大ボスの娘の行方を探す仕事が命令される。それ
は、彼にはた易い仕事だったが…
同じような話は、ヴィン・ディーゼル主演でもあった気がす
るし、アクション俳優は必ず一度は演じる役柄というところ
だろう。それなりに格好よく決められるし儲け役でもある。
また新人監督にとっても、細かい演出も不要だし、こちらも
やり易いところだろう。
そして観客も安心して見ていられるという感じの作品だ。
J・J・コノリーという作家のデビュー小説の映画化で、原
作者自身が脚本も担当している。因にコノリーは、2001年に
『ロンゲ・ヤード』を翻案した『ミーン・マシーン』の脚本
も手掛けている。
現実がどうかは知らないが、イギリスの麻薬事情や、アムス
テルダムの様子、さらに東欧圏との関り合いなど、興味深い
ヨーロッパの裏事情が盛り込まれていて、その辺を見ている
といろいろ楽しめた。
登場人物は次々死んでしまうし主人公の命も狙われている。
その意味では殺伐とした話ではあるが、そんな状況を主人公
がいかに潜り抜けて行くか、そこが面白い作品だ。そのため
の伏線や策略なども、納得できるように作られていた。
『ミーン・マシーン』も、伏線や策略などの点は納得できる
作品だったから、これは脚本家コノリーの腕とも言えそうだ
[5]続きを読む
06月30日(金)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る