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On the Production
by 井口健二
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■チーズとうじ虫、ダスト・トゥ・グローリー、THE WINDS OF GOD、ママン、ハイテンション、狩人と犬、森のリトルギャング
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※
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『チーズとうじ虫』
ガンを告知され、死期の迫る母親の姿をその娘が追ったヴィ
デオ作品。本作は、ナント三大陸映画祭でドキュメンタリー
部門の最高賞を受賞した。
この映像が撮られた経緯は、「母親の病気が直ると信じ、そ
の奇跡を記録するために始められた」とプレス資料にある。
そうでもなければ、実の娘がこんな記録を撮れるものではな
いだろう。
だからこの作品では、闘病の辛さなどは出てこない。何故な
ら、そんな時は撮影できる状況ではなかったのだから…写さ
れているのは、あくまでも奇跡を信じて、明るく健気に生き
ている祖母、母親、娘3代の記録だ。
それこそ、作品の始まりでガンの告知に対する多額の保険金
が下りて、自動車やテレビを買い替え、さらに家庭菜園のた
めに小型の耕運機を買ってしまったりもする。そんな無邪気
な生活が綴られて行く。
母親は元教員だったようで、油絵を描いたり三味線を習った
り、余命の減っていく中、精一杯の生活を楽しもうとしてい
るようだ。しかし、抗ガン剤によって頭髪が抜け落ちたり、
徐々に弱って行く姿も記録される。
だが、娘は途中で記録を続けられなくなったようだ。それは
当然だろう。従って映像はそこで飛んで、後は葬儀となる。
そしてその後の生活が写し出される。自分の娘のことを語る
祖母の姿や、自然の変化の中で母親がいないことの不思議さ
が描かれる。
ドキュメンタリーというのは得てして冷酷なものだ。この作
品は、そういうシーンは撮れなかったと言いながらも、やは
り冷酷に感じられる。それは映像という残された形が冷酷さ
を助長するのかも知れない。
ただし本作は、決して嫌な感じのするものではなかった。な
お、題名はイタリアの歴史家カルロ・ギンズブルグの著作か
らの引用で、その中でうじ虫は天使に例えられているのだそ
うだ。刺激的な題名だが、その意味は決して邪なものではな
かったようだ。
『ダスト・トゥ・グローリー』“Dust to Glory”
毎年11月にバハ・カリフォルニアで開催されている半島の付
け根の町エンセナダから、南端のラバスに至る全長1000マイ
ルのオフロードレース=バハ1000を記録したドキュメンタリ
ー作品。
製作は、『エンドレス・サマー』の監督ブルース・ブラウン
の息子で、自身も『ステップ・イントゥ・リキッド』で大ヒ
ットを記録しているデイナ・ブラウン。彼はこのレースを、
50台以上のカメラと4機のヘリコプター、13のカメラユニッ
ト、90人のスタッフで記録した。
レースの起原は1962年、当時アメリカでのオートバイの販路
拡大を狙っていたホンダが、プロモーションのために2人の
ライダーによるバハ・カリフォルニア縦断を企画。それが雑
誌などに紹介されてホンダの知名度を高めたというものだ。
そして1967年からは公式にレースとして毎年実施されている
という。ただしレースと言っても、冠スポンサーなどによっ
て大掛かりに運営されているのではなく、主催はほとんど個
人とヴォランティアによって実施されているものだ。
実際、事故などの情報は、ヴォランティアの無線士によって
伝達されているが、その連絡が不調で焦る様子や、事故処理
が無事に終ってほっとする様子などは、プロの仕事では出せ
ない暖か味に溢れていた。
一方、参加者もほとんど素人ばかりで、そんな中にマリオ・
アンドレッティがいたり、過去にはジェームズ・ガーナーや
スティーヴ・マックィーンが参加したこともあるそうだ。な
お、ファクトリーとしての参加が紹介されているのホンダだ
けだったようだ。
また、一族で参加している人たちや、夫や息子の走る姿を見
ていて自分たちも出場することにした女性チーム、さらに初
代チャンピオンが息子と共にレースに復帰するなど、まさに
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06月29日(木)
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