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On the Production
by 井口健二
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■第113回
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※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※
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今回は久しぶりに記者会見の報告から。
7月1日に日本公開されるピクサー=ディズニー作品『カ
ーズ』のジャパンプレミアに合せて監督のジョン・ラセター
が来日し、都内で会見が行われた。会見では後半に日本語吹
き替えを担当する声優なども登場して、映像報道はその辺に
集中しそうだが、前半ではラセター監督のキャラクター作り
の秘密のようなものも披露され、興味深いものだった。
その中で監督は、キャラクター作りには最初にその存在の
目的を考えるとしていた。そこで監督は演壇のコップを手に
取って、「コップの目的は液体を入れること。であるなら水
の満たされたコップは幸せに感じているだろう。しかし水を
飲まれたら、コップは幸せを減じられて、もしかしたら飲ん
だ人に怒りを感じるかも知れない」と発想して行くそうだ。
これを監督は、自分で喋ったときと通訳の時の2回同じ身振
り手振りで説明してくれた。
アニメーションというのは、一般的にキャラクターが先行
してそこから物語が作られて行くが、今回の監督の発言は、
さらにその前のキャラクターそのものの発想に関するもので
興味深かった。それにしてもこの発想によると、全てが人間
の感情に置き換えられることになるものだが、この辺にラセ
ター監督作品のキャラクターがいつも「人間の置き換えでは
ないのに人間臭く感じられる」理由があるようにも思えた。
それは他社の作品ではあまり感じられないし、ピクサーでも
ラセター作品以外ではちょっと違う感じもする。この辺が彼
の作品の魅力のようにも感じた。
* *
以下は製作ニュース、今回は続報がいろいろ届いている。
まずは、2005年12月1日付第100回で紹介したジム・キャ
リーとティム・バートンの顔合せで、パラマウントが進めて
いた“Ripley's Believe It or Not”の計画が、1億5000万
ドルに達すると見られる製作費の高騰で頓挫し、替ってバー
トンが以前に計画していたミュージカルの映画化“Sweeney
Todd”が再浮上する可能性が出てきたということだ。
しかもこの計画は、以前にはジョニー・デップの主演で進
められていたもので、そのデップは12月15日付第101回で紹
介した“Shantaram”の映画化の準備を進めていたものの、
こちらも監督のピーター・ウェアが降板を表明して撮影が先
送りされる可能性が出てきたということだ。そこで、両者の
スケジュールが空く可能性の高い来年前半に撮影できるとい
うことなのだが…。
因に“Sweeney Todd”は、1979年度のトニー賞で、作品、
主演男・女優、演出、作詞作曲、振り付けを独占したヒット
ミュージカルだが、お話は、世にも恐ろしい床屋と人肉パイ
を売る肉屋の女将が主人公という飛んでもないもの。それを
バートン、デップ、それにヘレナ・ボナム=カーター(?)
の顔ぶれでというのは、かなりの作品になりそうだ。
そしてこの計画は、以前はワーナーで計画されていたもの
だが、バートンがスケジュールの都合などで降板したことか
ら権利が放棄され、その後をドリームワークスが引き継いで
いた。従ってパラマウントとしては、すでに子会社化してい
るドリームワークス作品が替って製作されるのは好都合とい
うこともある。またドリームワークスでは、権利を獲得した
後はサム・メンデス監督が脚本家のジョン・ローガンと共に
準備を進めていた時期もあったということで、会社的には計
画は進行中ということのようだ。
ただし“Shantaram”はワーナーで進められている上に、
デップとしては、自身で設立したプロダクションの第1回作
品という位置づけもあり、そう簡単には諦められない。さて
どうなることか。
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06月15日(木)
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